手技・処置

体温測定の正しい方法と注意点|「いつもの測り方」を見直してみませんか?

2026-04-26

体温測定——毎日何度も行うからこそ、「いつもの測り方」が自己流になっていませんか?

挿入角度、測定のタイミング、患者さんに任せるかどうか。学生時代に習ったきり、振り返る機会は意外と少ないものです。この記事では、正しい測定手順と、現場で迷いやすいポイントをコンパクトにまとめます。

1. 腋窩測定の正しい手順

測定前の準備

  • 腋窩の汗を乾いたタオルで拭く。汗があると気化熱で皮膚温が下がり、低く出る
  • 可能であれば測定前に数分間腋窩を閉じておくと、腋窩内の温度が安定し精度が上がる

体温計の挿入角度と位置

  • 体温計の先端を腋窩の最深部(くぼみの中央)に当てる
  • 下から上に向けて差し込み、体の軸に対して約30度の角度にする
  • 腕をしっかり閉じ、手のひらを上向きにすると腋窩が密閉されやすい(テルモ体温研究所)
腋窩での体温計の挿入角度(約30度)
体温計を下から上に向けて差し込み、体の軸に対して30度の角度にする。

角度が浅すぎたり、先端が腋窩の中心からずれていると、低い値が出やすくなります。

予測式と実測式——いつ実測に切り替える?

現在の臨床現場で使われる体温計の多くは予測式です。数十秒で測定できるため日常的に使われていますが、あくまで予測値であることを理解しておく必要があります。

種類測定時間特徴
予測式約15〜30秒日常のスクリーニングに適する。値がばらつくことがある
実測式約10分腋窩の温度が平衡に達した値を測定。より正確

実測への切り替えを検討する場面:

  • 予測式で値がばらつく、エラーが出る
  • 微熱の判断に迷う(平熱との差が小さく、予測値では判断しにくい)
  • 正確な体温推移が必要な場面(術後・感染評価など)

予測式体温計でも、そのまま挟み続けると実測値が表示される機種が多いです。

2. 測定部位の使い分け

各部位の特徴と温度差

測定部位正常値の目安特徴
腋窩36.0〜37.0℃最も一般的。外気温の影響を受けやすい
鼓膜腋窩より約0.5〜1.0℃高い深部体温に近い。短時間で測定可能。挿入角度で誤差が出やすい
直腸腋窩より約0.5〜1.0℃高い最も深部体温に近い。周術期で使用。患者の羞恥心に配慮が必要

鼓膜体温計の使い方(簡易手順)

1

耳介を後上方に軽く引っ張り、外耳道をまっすぐにする

2

プローブを鼓膜の方向にゆっくり挿入する

3

測定は約1秒で完了(ブザー音で確認)

注意:耳垢が多いと正確に測れません。挿入の角度や深さで誤差が出やすい点にも注意してください。

直腸温測定の方法(参考)

1

側臥位で膝を軽く曲げてもらう

2

体温計の先端に潤滑剤を塗布

3

肛門から約3〜4cm挿入(成人)し、約3〜5分保持

4

測定中は体温計を手で支え続ける(脱落・穿孔防止)

主に全身麻酔中など深部体温の正確な把握が必要な場面で使用されます。直腸手術後・肛門疾患がある場合は禁忌です。患者の羞恥心への配慮(カーテン・声掛け)も忘れずに。

部位が変われば基準値も変わります。前回と違う部位で測った場合は、その旨を記録に残すことが大切です。

腋窩で測れない場面

  • 片麻痺:患側は循環が異なるため健側で測定
  • 腋窩リンパ節郭清後:手術側はリンパ液の流れが障害されており、体温が正確に反映されにくい。感染リスクの観点からも刺激を避ける(血圧測定・採血・点滴も同様)
  • 腋窩の創傷・皮膚トラブル:接触による疼痛や感染リスク
  • 著明な痩せ:腋窩が密閉できず正確な値が得られにくい → 鼓膜体温計の使用を検討

3. 現場でよくある「それ、大丈夫?」

入浴後・食後すぐに測っていない?

入浴・食事・運動の後は体温が一時的に上昇しています。少なくとも30分は空けてから測定するのが原則です(テルモ体温研究所)。業務の流れで「入浴直後にバイタル」となりがちですが、高く出た値をそのまま記録すると、発熱と誤認する可能性があります。

クーリング中はどこで測る?

クーリング(腋窩冷罨法)を行っている場合、その腋窩では正確な体温は測れません。反対側の腋窩や鼓膜で測定し、通常と違う部位で測定したことを記録してください。

左右差があるときの考え方

腋窩温に左右差が出ることがあります。これは末梢循環の違いや測定条件の差によるもので、なるべく毎回同じ側で測定することが推奨されます。左右差が持続的に大きい場合は、血管系の問題なども考慮し、医師に相談してください。

患者さんに任せるかどうかの判断

自分で体温計を挟める患者さんには任せたくなりますが、角度がずれる・浅く挟む・途中で腕が開くといったことが起きやすいです。以下を目安にしてください。

  • 任せてよい場合:指示が理解でき、腕をしっかり閉じられる。測定完了まで体位が安定している
  • 看護師が管理する場合:認知機能の低下がある、体動が多い、正確な値が必要な場面
  • いずれの場合も、測定完了時に体温計の位置を確認する習慣をつけると安心です

測定中の声掛け

体温測定中はベッドサイドで患者さんの話を聞く時間にもなります。ただし、会話中に腕が開いてしまうことがあるので、挟んでいる側の腕が動いていないか意識しておくとよいでしょう。

また、体温計の完了音(ピッピッ音)は3,000〜4,000Hzの高周波で、加齢性難聴で聞こえにくくなる周波数帯です。患者さんから「音が聞こえなかった」と言われる場面は多いですが、聞こえないのは自然なことです。「この音は年齢とともに聞こえにくくなる周波数なんですよ」と一言添えると、患者さんの安心につながります。在宅で自己測定する患者さんには、大きな音や振動で知らせるタイプの体温計を提案するのもよいでしょう。

豆知識:なぜ体温計の音は高いのか?

人間の耳は同じ音量なら高い音の方が聞き取りやすく、日常の雑音は低い音が多いため、高い音の方が埋もれにくい——という理由で高周波が採用されていました。ただし高齢者には逆効果になるため、2002年にJIS(日本工業規格)が「通知音は2,500Hz以上を使わない」という新基準を策定。最近は「メリーさんのひつじ」のようなメロディ音で知らせる体温計もあります。メロディには高低さまざまな音が含まれるため、どの年齢でも聞き取りやすいそうです。

4. チームで揃えたい測定条件

毎回同じ条件で測ることの意味

体温測定で最も重要なのは前回との比較(トレンド)です。しかし、測定のたびに条件が違うと、変化が「本当の変化」なのか「測定条件の違い」なのか区別がつきません。

揃えたいポイント:

  • 測定部位(腋窩の左右・鼓膜など)
  • 測定のタイミング(入浴前 or 後、食前 or 後)
  • 予測式 or 実測式(同じ患者さんには同じ方法で)

「この患者さんはどこで測る」を共有する

片麻痺の患者さん、腋窩に創傷がある患者さん、痩せていて腋窩測定が難しい患者さんなど、通常と違う測定方法が必要な場合は、チームで共有しておくことが大切です。申し送りやベッドサイドの情報共有ツールに一言書いておくだけで、スタッフ間のばらつきを防げます。

よくある疑問 Q&A

Q: 体熱感があるのに体温は平熱。どう判断する?

A: 体熱感(触った感じの熱さ)と体温計の値が一致しないことはあります。体熱感は皮膚表面の血流や室温に影響されるため、深部体温とずれることがあるためです。まず測定条件を確認(汗を拭いたか、角度は正しいか、十分な時間測定したか)し、それでも一致しない場合は実測式で再検してください。体熱感があるなら、他のバイタルサイン(脈拍・呼吸数)や全身状態も合わせて評価し、必要に応じて経過観察・報告を行います。

Q: 測定時の体勢(姿勢)は影響する?

A: 大きな影響はありませんが、腕がしっかり閉じられる姿勢であることが大切です。臥位でも座位でも、腋窩が密閉されていれば問題ありません。ただし、側臥位で下側の腋窩は体重で圧迫されて温度がこもりやすいため、上側の腋窩で測定する方が安定した値が得られます。

Q: 痩せている患者さんでエラーが出るときはどうする?

A: 痩せている方は腋窩の脂肪が少なく、体温計と皮膚の密着が不十分になりやすいです。対処法としては、腕をしっかり押さえて密着させる、それでも難しい場合は鼓膜体温計に切り替えることを検討してください。鼓膜に切り替えた場合は、その旨を記録に残し、チームに共有します。

まとめ

  • ✅ 腋窩測定は汗を拭き、約30度の角度で最深部に当てる
  • ✅ 予測式で値がばらつく・判断に迷うときは実測式に切り替える
  • ✅ 入浴・食事後は30分以上空ける。クーリング中は反対側で測定
  • ✅ 患者さんに任せる場合も、完了時に体温計の位置を確認する
  • ✅ 同じ患者さんには同じ条件で測定し、トレンドを正しく評価する
  • ✅ 測定部位や方法が通常と異なる場合はチームで共有する

体温測定は毎日行う基本のバイタルサインだからこそ、「いつものやり方」を時々振り返ることに意味があります。

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参考・根拠

  • テルモ体温研究所「ワキでの検温方法」「体温はどこで測っても同じですか?」
  • 看護roo!「体温測定の意義と注意点は?」「体温測定時、上腕を密着させ、10分間測定するのはなぜ?」
  • ナース専科「バイタルサインの基本! 体温(深部体温)の正しい測定法」
  • 日本看護技術学会

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。