手技・処置

SpO2の評価と対応|数値の読み方・測定の落とし穴・チームで揃えたい判断基準

2026-04-26

この記事でわかること

  • ✓SpO2が見ているもの(仕組みと限界)
  • ✓SpO2が低いときのアセスメントと酸素投与の目標値
  • ✓測定の落とし穴(その値、本当に信頼できる?)
  • ✓SpO2×他のバイタルの組み合わせで見えるもの
  • ✓チームで揃えたい判断基準と話し合うべきポイント

「SpO2 93%です。どうしますか?」

この質問への答えが、スタッフによって違う。酸素を上げるか、様子を見るか、そもそもこの値は正しいのか——判断がバラつきやすいポイントです。

SpO2はベッドサイドで最も手軽に測れるバイタルサインですが、数値の意味を正しく理解していないと、誤った判断につながります。この記事では、SpO2の読み方・測定の落とし穴・チームでの判断基準を整理します。

1. SpO2とは——この数値は何を見ているのか

パルスオキシメーターの仕組み

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は、ヘモグロビンのうち酸素と結合しているものの割合を示しています。パルスオキシメーターは、指先に赤色光と赤外光を当て、その吸収の差からSpO2を算出します。

つまりSpO2は「ヘモグロビンが酸素をどのくらい運んでいるか」の割合であって、「体にどのくらい酸素が届いているか」そのものではありません。この違いが、後述するいくつかの「落とし穴」につながります。

SpO2とPaO2の関係——酸素解離曲線

SpO2とPaO2(動脈血酸素分圧)の関係は直線ではなく、S字型のカーブ(酸素解離曲線)で表されます。

酸素解離曲線(SpO2とPaO2の関係)
酸素解離曲線。SpO2 90%/PaO2 60mmHg付近を境に、カーブが急峻になる。
  • SpO2 90%はPaO2 約60mmHgに相当する目安とされ、呼吸不全の判定にはABG(動脈血ガス分析)による評価が用いられる。90%を下回ると、わずかなSpO2の低下でPaO2が急激に下がる
  • 酸素解離曲線は体温・pH・CO2などの因子によってシフトする。そのため、同じSpO2でも臨床的な意味が異なることがある

臨床で大切なのは、SpO2 90%付近は「崖」であることを意識すること。酸素解離曲線のこの領域では、わずかなPaO2の低下でSpO2が大きく下がります。95%から90%に下がるのと、90%から85%に下がるのでは、意味がまったく違います。

「SpO2が正常=呼吸は大丈夫」ではない

  • 貧血:ヘモグロビンが少なくても、あるヘモグロビンの飽和度は正常に出る。SpO2 98%でもHbが7g/dLなら、実際に運ばれる酸素量は大幅に少ない
  • CO中毒:一酸化炭素はヘモグロビンと強く結合するが、パルスオキシメーターは酸素と区別できず、SpO2は偽高値を示す
  • 呼吸数の増加で代償している:SpO2が保たれていても、呼吸数が30回/分に増加しているなら、それは代償の限界が近いサイン

SpO2の「割合」と「総量」の違い

SpO2は「ヘモグロビンに酸素が結合している割合」であり、「体にどれだけの酸素が届いているか(総量)」ではありません。SpO2とHbをセットで見ることで、酸素化の問題がどこにあるかの手がかりになります。

  • Hbが高い+SpO2が低い → トラック(Hb)はたくさんあるのに荷物(酸素)を積めていない。呼吸・酸素化の問題をまず疑うが、循環不全や測定の信頼性も合わせて確認する
  • Hbが低い+SpO2が正常 → 走っているトラックには荷物が満載だが、トラック自体が少ない。血液(酸素を運ぶ手段)に問題がある

2. SpO2が低いとき——「93%です」の先に何を考えるか

まず確認すべきこと

  1. 測定は正しいか:プローブの装着、指の冷感、体動、マニキュアの有無
  2. 別の指で再検:指を変えて測り直す
  3. その人の普段のSpO2はいくつか:普段96%の人が93%なら要注意。普段90%のCOPD患者が93%なら良好

低下の原因を考える——呼吸の問題 vs 循環の問題

分類原因確認ポイント
呼吸の問題気道閉塞・痰貯留・無気肺・肺炎・気胸呼吸音・呼吸パターン・痰の有無・胸部の動き
循環の問題心不全・ショック・肺塞栓血圧・脈拍・末梢の冷感・浮腫・胸痛
その他鎮静剤による呼吸抑制(まず呼吸数の低下として現れる)・長時間同一体位による無気肺薬剤の投与状況・呼吸数の確認・体位変換で改善するか

酸素投与の目標値——「高ければいい」わけではない

酸素投与を行う場合、やみくもにSpO2を上げるのではなく、目標値を意識することが重要です。以下は急性期の酸素療法における目標値です(BTS 2017)。

対象SpO2の目標理由
一般的な急性期患者94-98%急性期の酸素療法として正常範囲を維持。過剰な酸素投与は避ける
COPD患者(CO2貯留リスクあり)88-92%高濃度酸素でCO2ナルコーシスのリスク
なぜ高すぎてもダメなのか:過剰な酸素投与は活性酸素による組織障害や、COPD患者ではCO2ナルコーシスのリスクがあります。そのメカニズムは複数の要因が関与するとされていますが、簡潔に言えば高濃度酸素によってCO2が蓄積しやすくなり、意識障害に至る可能性があります。「SpO2が100%=安心」ではなく、目標範囲内に保つことが大切です。

酸素を増やしても上がらないとき

  • 気道の問題:痰貯留で酸素が肺胞に届いていない → 吸引を検討
  • 肺の問題:無気肺・肺炎・肺水腫で換気面積が減少 → 体位調整(酸素化しやすい体位の検討)、医師へ報告
  • 循環の問題:ショック・肺塞栓で肺への血流が不足 → バイタル全体を確認し報告
  • 酸素デバイスの確認:酸素の接続、流量設定、デバイスのフィッティング

「酸素を増やしても上がらない」は、単純な酸素不足ではない可能性を示す重要なサインです。すぐに医師に報告してください。

報告例:同じ93%でも伝え方で変わる

報告例①:情報が薄い

「○○さん、SpO2 93%です。酸素上げますか?」

報告例②:文脈が伝わる

「○○さん、SpO2 93%です。普段は96-97%で安定していました。呼吸数は24回で、やや努力様呼吸があります。プローブの装着は確認済み、指を変えても93%でした。酸素は現在2L鼻カニュラです。酸素を増量してよいでしょうか?」

3. 測定の落とし穴——その値、信頼できる?

末梢循環不良で不正確になる

パルスオキシメーターは末梢の脈波を読み取って測定しています。以下の場面では信頼性が低下します。

  • 指先の冷感(寒冷、末梢循環不良)
  • ショック(末梢血管が収縮している)
  • 低血圧(脈波が弱い)
  • 末梢動脈疾患

冷たい指で測定して低い値が出た場合、その値だけを根拠に判断するのは早計です。まず指を温める、別の指で測る、耳たぶでの測定を試みるなどして、信頼できる値を得ることが大切です。ただし、明らかな呼吸苦・チアノーゼ・意識変容がある場合は、測定値の再確認と並行して患者の緊急性を評価し、施設基準に沿った対応(報告・酸素投与など)を優先してください。測定の確認と臨床的な緊急性評価は、どちらかではなく並行して行うものです。

体動・マニキュア・プローブの装着不良

  • 体動:振戦や不随意運動があると、脈波にノイズが入り不正確になる
  • マニキュア・ジェルネイル:光の透過に影響する。可能であれば除去するか、装着していない指で測定
  • プローブの装着不良:発光部と受光部がずれている、指の奥まで入っていない

脈波を確認する——数値だけ見ていませんか?

パルスオキシメーターの多くは、SpO2の数値とともに脈波(波形やバー表示)を表示します。脈波がきれいに出ていなければ、表示されているSpO2の値は信頼できません。数値だけでなく、脈波が安定して出ているかを確認する習慣をつけましょう。

測定値が怪しいときのアクション

  1. プローブの装着を確認する
  2. 別の指で測り直す
  3. 指が冷たければ温めてから再測定
  4. 脈波が安定しているか確認
  5. それでも怪しい場合は、呼吸状態を直接観察(呼吸数・呼吸パターン・チアノーゼ・努力呼吸の有無)して総合的に判断
  6. 必要に応じて動脈血ガス分析(ABG)を医師に提案

4. SpO2×他のバイタル——組み合わせで見えるもの

SpO2低下+呼吸数増加 → 呼吸不全の進行

SpO2が低下し、呼吸数が増加している場合、呼吸不全が進行している可能性があります。酸素化だけでなく、換気(CO2の排出)にも問題が出ていないか注意が必要です。すぐに報告してください。

SpO2低下+頻脈+血圧低下 → ショック

SpO2の低下に加えて頻脈と血圧低下を伴う場合、ショック(循環不全)を疑います。肺塞栓、大量出血、敗血症などが考えられます。施設の急変対応基準に従い迅速に対応してください。

SpO2正常+呼吸数増加 → 代償されているが危険なサイン

SpO2が正常範囲でも、呼吸数が増加している場合は要注意です。呼吸数を上げることでSpO2を保っている状態は「代償」であり、疲弊すれば一気にSpO2が低下する可能性があります。SpO2が正常だからと安心せず、呼吸数とセットで評価してください。

5. チームで揃えたい判断基準

カンファレンスで話し合うべき3つの問い

1

「SpO2何%で報告する」をどう決めるか?

一律の数値ではなく、患者の普段のSpO2・基礎疾患(COPD等)・酸素投与の有無を踏まえた基準を共有できているか

2

測定値が低く出たとき、まず何をするか?

すぐに酸素を上げるのではなく、プローブ確認→指を変えて再検→呼吸状態の観察、という流れをチームで統一できているか。ただし、明らかな緊急性がある場合は測定確認と並行して対応することも共有しておく

3

酸素投与の目標値を共有できているか?

一般的な患者は94-98%、COPD患者は88-92%。「上げれば上げるほどいい」ではないことをチームで理解できているか

6. よくある疑問 Q&A

Q. SpO2は何%で報告すべき?

A. 一律の基準はありません。大切なのは「その人にとって異常かどうか」です。判断の手がかりとしては、目標範囲から外れた場合・普段のSpO2より明らかに低下した場合・呼吸数増加など他の変化を伴う場合が報告を検討するタイミングです。具体的な数値基準は患者背景や施設のルールによって異なるため、病棟の報告基準が優先されます。COPD患者のように88-92%が目標の場合もあるため、患者ごとの目標値を把握しておくことが前提です。

Q. SpO2が低いのに「苦しくない」と言われたら?

A. 自覚症状がない=大丈夫、ではありません。慢性的な低酸素に体が慣れている場合(COPD等)、SpO2が低くても苦しさを感じにくいことがあります。また、高齢者や認知症の患者さんは呼吸困難を訴えにくい場合もあります。自覚症状の有無にかかわらず、客観的な所見(呼吸数・努力呼吸・チアノーゼ)とSpO2の値で判断してください。

Q. 酸素投与を開始・増量したら、いつ再評価する?

A. 酸素投与を開始・変更したら、5-10分後に再評価するのが一般的です。SpO2の変化を確認し、目標値に達しているか、過剰になっていないかを評価します。改善が見られない場合は、原因の再検索と医師への報告を行います。

Q. 指によってSpO2の値が変わるのはなぜ?

A. パルスオキシメーターは指先の脈波(血流の拍動)を読み取って測定しているため、指ごとの末梢循環の状態によって値が変わります。冷えている指は血流が悪く低く出やすい、点滴側の手は循環が影響を受けている場合がある、圧迫されていた指は一時的に血流が悪いなどです。だからこそ、低く出たら別の指で再検することに意味があります。

Q. 冷えた指で低く出て、温かい指で正常だった場合、温かい方を信じていい?

A. 基本的には温かい指のほうが信頼性が高いです。ただし、温かい指の値だけを信じて終わりにせず、呼吸状態の直接観察(呼吸数・努力呼吸・チアノーゼ)も合わせて確認してください。測定値と臨床所見が一致していれば、その値を採用してよいでしょう。

Q. SpO2の値がばらつくとき、高い値と低い値のどちらを信じる?

A. ばらつく場合は、脈波が安定しているときの値を採用するのが原則です。高い値・低い値のどちらかを選ぶのではなく、安定した脈波が得られる条件を整えてから測定し直すことが大切です。それでもばらつく場合は、呼吸状態を直接観察し、必要に応じて動脈血ガス分析を医師に提案してください。

Q. 貧血の患者さん、SpO2は正常だけど大丈夫?

A. SpO2はヘモグロビンの酸素飽和度(割合)を見ているため、貧血でHbが低くても飽和度は正常に出ます。しかし、ヘモグロビン自体が少ないため、実際に組織に運ばれる酸素の量は減少しています。SpO2が正常でも、貧血がある場合は酸素供給が不十分な可能性があることを意識してください。

まとめ

✅ SpO2はヘモグロビンの酸素飽和度を見ている。「SpO2正常=大丈夫」ではない

✅ SpO2が低いときは、測定の信頼性を確認しつつ、緊急性があれば並行して対応する

✅ 酸素投与の目標は一般的に94-98%、COPD患者は88-92%。高ければいいわけではない

✅ SpO2正常+呼吸数増加は代償の限界が近いサイン。SpO2だけで安心しない

✅ 貧血ではSpO2が正常でも酸素運搬量は低下している。Hbと合わせて評価する

✅ 判断がバラつくのは個人の問題ではなくチームの仕組みの問題。カンファレンスで3つの問いを話し合おう

SpO2は最も手軽に測れるバイタルサインだからこそ、「数値を見て終わり」になりがちです。測定の信頼性を確認し、他のバイタルと組み合わせて読み、チームで目標値を共有する——その習慣が、患者さんの安全を守ります。

参考・根拠

  • 日本呼吸器学会「酸素療法マニュアル」
  • O'Driscoll BR, et al. (2017). BTS guideline for oxygen use in adults. Thorax, 72(Suppl 1), ii1-ii90.
  • GOLD (Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease) Report
  • 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。