手技・処置

脈拍測定の正しい方法と注意点|3本指の当て方から測定時間の使い分けまで

2026-04-28

脈拍測定は手技としてはシンプルです。でも、「何秒数える?」「モニターがあれば触診しなくていい?」「不整を触れたけど、どうする?」——意外と迷う場面がありませんか?

この記事では、正しい測定手順と、現場で生まれやすい疑問をコンパクトにまとめます。

1. 橈骨動脈での測定手順

なぜ橈骨動脈で測るのか

  • 皮膚に近く、触知しやすい
  • 衣服を脱いでもらう必要がない(プライバシーに配慮しやすい)
  • 緊急時にも速やかに測定できる

3本指の当て方と位置

  • 患者さんの手のひらを上に向けてもらう
  • 手首の親指側に、示指・中指・薬指の3本を橈骨動脈に沿って並べる
  • 最初は均等に軽く圧をかけ、脈拍を感じたら数・リズム・強さを観察する
橈骨動脈での3本指の当て方
示指・中指・薬指の3本を橈骨動脈に沿って並べる。親指は使わない。

なぜ親指を使わないのか

親指には比較的太い動脈が走っているため、測定者自身の拍動を患者さんの脈拍と混同しやすいのが理由です。必ず示指・中指・薬指の3本で測定してください。

観察するポイント

脈拍測定では、数を数えるだけでなく以下も観察します。

項目観察内容
数(レート)1分間あたりの回数
リズム整か不整か。脈が飛ぶ(結滞)がないか
強さしっかり触れるか、微弱か
左右差左右で差がないか

「数を数えて終わり」ではなく、リズムと強さも同時に感じ取るのが触診の価値です。

2. 15秒×4 vs 1分測定——どう使い分ける?

それぞれの使いどころ

方法適する場面
15秒×4(または30秒×2)容態が安定し、リズムが整である患者さんのスクリーニング
1分測定初回測定・不整脈がある(疑われる)・脈拍異常のある患者さん

15秒測定は効率的ですが、リズムの不整や微妙な変化を捉えにくいという限界があります。

1分測定が必要な場面

  • 初めて測定する患者さん(ベースラインの把握)
  • 不整脈がある・疑われる患者さん
  • 脈が微弱で数えにくい場合
  • 脈拍に異常が認められた場合(頻脈・徐脈)

迷ったら1分測定を選べば間違いない、と覚えておくとよいでしょう。

3. 現場でよくある「それ、大丈夫?」

脈が触れにくい患者さんへの対応

末梢循環が悪い方、低血圧の方、浮腫が強い方では、橈骨動脈が触れにくいことがあります。

  • 指の位置を少しずらして探り直す
  • 圧を変えてみる(強すぎると血管を押しつぶしてしまう)
  • それでも触れにくい場合は、頸動脈や上腕動脈など別の部位を検討する
  • モニターの脈波や聴診器で心尖部の心拍数を聴取するのも一つの方法

自分の脈と混同しないコツ

脈が微弱な患者さんでは、自分の指先の拍動を患者さんの脈拍と間違えることがあります。

対処法:利き手で患者さんの脈を測りながら、もう片方の手で自分の橈骨動脈に触れる。自分の拍動と患者さんの拍動のリズムが違えば区別できます。

モニターの心拍数と手測定が違うとき

「モニターには80って出てるのに、手で測ると70しかない」——こういう場面はあります。理由は:

  • ECGモニターは心臓の電気的活動(心拍数)を表示している
  • SpO2モニターや手測定は末梢に届いた拍動(脈拍数)を反映している
  • 不整脈があると、心臓は収縮しても末梢に十分な拍動が届かないことがある(脈拍欠損)
  • つまり、モニターの種類によって表示される値の意味が異なる点にも注意が必要

この差自体が臨床的に重要な情報です。差がある場合は報告してください。

左右差があるときの考え方

脈拍の左右差が明らかな場合は、血流障害や測定条件の違いが考えられます。継続して測定する場合は毎回同じ側で比較し、持続的に差がある場合は医師に相談してください。

検温時、毎回触診を加えるべき?

現場では血圧計で血圧を測ると脈拍数も表示されるため、「それで十分では?」と感じるのは自然なことです。ベッドサイドモニターも同様です。

血圧計・モニターでわかること:

脈拍の数(レート)(ただし血圧計の脈拍数はカフの圧力変動から算出しているため、不整脈がある場合は不正確になりやすい点に注意)

触診でしかわからないこと:

  • リズムの質(整か不整か、脈が飛ぶか)
  • 脈の強さ(しっかり触れるか、微弱か)
  • 左右差
  • 脈拍欠損(モニターの心拍数と末梢の脈拍数の差)

つまり、血圧計やモニターの数値は「数」だけであり、脈拍の質的な情報は触診でしか得られません。

現実的な使い分け:

  • 容態が安定し、不整脈のない患者さん → 血圧計の脈拍数で日常的なスクリーニングとし、定期的に触診を加える
  • 不整脈がある・疑われる患者さん → 毎回触診で確認する
  • 新規入院・術後・状態変化時 → 触診で確認する

「毎回必ず触診」が理想ですが、業務量との兼ね合いもあります。大切なのは「血圧計の数値だけで完結しない」という意識を持つことと、触診が必要な患者さんをチームで共有しておくことです。

不整脈を触知したときの声掛け

脈拍測定中に不整脈を触れたとき、「脈が乱れてますね」とそのまま伝えると、患者さんが不安になることがあります。

確認したいときは、例えば「これまでに脈のリズムについて指摘されたことはありますか?」と聞くと、患者さんを驚かせずに情報を得られます。初めて指摘する場合は、必要以上に不安を与えないよう配慮しつつ、医師への報告を優先してください。

4. チームで揃えたい測定条件

毎回同じ条件で測ることの意味

体温と同じく、脈拍もトレンド(経時変化)で見ることが重要です。測定条件がバラバラだと、変化が「本当の変化」なのか「条件の違い」なのか区別がつきません。

揃えたいポイント:

  • 測定方法(触診 or モニター)
  • 測定時間(15秒 or 1分)
  • 安静の確認(体動直後に測っていないか)

「この患者さんは手測定」を共有する

不整脈がある患者さん、脈拍欠損がある患者さんなど、触診での測定が重要な患者さんはチームで共有しておきましょう。「モニターの数値だけ記録していて、脈拍欠損に気づかなかった」という事態を防ぐためです。

よくある疑問 Q&A

Q: 脈拍と心拍数は同じ?

A: 厳密には違います。心拍数は心臓が収縮した回数、脈拍数は末梢で触れる拍動の回数です。正常であれば一致しますが、不整脈がある場合は心拍数>脈拍数(脈拍欠損)となることがあります。

Q: 橈骨動脈以外で測る場面は?

A: 橈骨動脈が触れにくい場合(ショック・末梢循環不良・浮腫など)は、頸動脈や上腕動脈で測定します。頸動脈は太く、血圧が低下しても比較的触知しやすい動脈です。ただし、頸動脈の触診は片側ずつ、軽く行ってください(両側同時の圧迫は避ける)。

Q: 安静時に測るべき?

A: はい。体動・会話・食事・入浴の直後は脈拍が上昇しています。正確なベースラインを得るためには、少なくとも5分程度の安静後に測定するのが望ましいです。ただし、緊急時はこの限りではありません。

Q: いつも不整脈がない人に不整が出たらどうする?

A: まず再度1分間測定して確認してください。再現性があれば、その時のバイタルサイン全体(血圧・SpO2・症状の有無)を確認し、速やかに報告してください。一過性の期外収縮は健常者でも起こりますが、その患者さんにとって今までなかった不整は見逃さないことが大切です。

まとめ

  • ✅ 橈骨動脈に示指・中指・薬指の3本を当て、親指は使わない
  • ✅ 数だけでなくリズム・強さ・左右差も観察する
  • ✅ 迷ったら1分測定を選ぶ。不整脈がある場合は必ず1分
  • ✅ モニターの心拍数と手測定の脈拍数に差がある場合は報告する
  • ✅ 同じ患者さんには同じ条件で測定し、トレンドを正しく評価する
  • ✅ 触診が重要な患者さんはチームで共有する

脈拍測定はシンプルな手技だからこそ、「数えて終わり」になりがちです。リズムを感じ取り、モニターでは得られない情報を拾う——そこに触診の価値があります。

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参考・根拠

  • 看護roo!「脈拍測定の手順・観察・報告のコツ|いまさら聞けない!ナースの常識【31】」
  • 看護roo!「3本の指(示指、中指、薬指)で測定するのはなぜ?|脈拍測定」
  • 看護roo!「正確に1分間測定するのはなぜ?|脈拍測定」
  • 看護roo!「脈拍は、一般に橈骨動脈で測定するのはなぜ?」
  • ナース専科「バイタルサインの基本! 脈拍測定に適した部位と手順」
  • 日本看護技術学会「バイタルサイン測定」

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。