手技・処置

褥瘡ケア・処置完全ガイド|DESIGN-Rの各項目からドレッシング選択・エスカレーションまでチームで判断を揃える

2026-05-06

この記事でわかること

  • ✓ 褥瘡ケアの全体像(予防→評価→処置の3層構造)
  • ✓ 創を見たら確認する4つの軸(深さ・滲出液・感染・壊死)
  • ✓ 湿潤環境管理(moist wound healing)の基本とTIME理論
  • ✓ ドレッシング材の選び方——3軸マトリクス(滲出液量×深さ×感染リスク)
  • ✓ 主要外用薬(ゲーベン・カデックス・ユーパスタ・フィブラスト・アクトシン等)の使い分け
  • ✓ DESIGN-R各項目から処置を引く逆引きフロー
  • ✓ WOCナース不在時のエスカレーション基準(即報告/早期相談/定期相談)
  • ✓ やってはいけない処置5選(消毒乱用・ガーゼ固着・過洗浄など)

「ブレーデンスケールでリスク評価して、DESIGN-Rで創を評価して、でその次は?」

褥瘡ケアの現場で、こんなモヤモヤを感じたことはありませんか?ドレッシング材の選び方が先輩によって違う、消毒する/しないの判断基準が曖昧、ガーゼ+ゲンタシン軟膏で一律対応している慣習、いつ医師に報告すべきかわからず報告が遅れる、WOCナースが自施設にいない——どの病棟・診療所でも起きている現場のリアルです。この記事のゴールは「チーム全体で褥瘡ケアの判断を揃える」こと。新人〜中堅看護師が現場で迷わない判断軸を作ります。

褥瘡ケアの3層構造
褥瘡ケアの3層構造:予防(ブレーデン)→評価(DESIGN-R)→処置(本記事)

1. 褥瘡ケアの全体像——予防・評価・処置の3層構造

褥瘡管理は、大きく3つの層で成り立っています。

層内容主なツール
第1層:予防リスク評価+介入で発生を防ぐ
第2層:評価発生した褥瘡の状態を評価
第3層:処置評価結果に基づくケア・処置本記事

WOCナース不在の現場での看護師の役割範囲

WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)が不在の有床診療所・中小規模病院では、一般病棟看護師がケア方針を立てる必要があります。「自分で判断していい範囲」と「医師にエスカレーションすべき範囲」を区別することが、安全で効率的なケアにつながります。

2. 創を見たらまず確認する4つの軸

褥瘡の創を前にしたとき、まず3秒で4つの軸を言語化する習慣をつけましょう。

軸観察ポイント何を判断するか
①深さ表皮のみ/真皮/皮下組織/筋・骨まで治癒期間の予測、外科介入の要否
②滲出液量少/中/多(ガーゼの濡れ具合・交換頻度)ドレッシング材の吸水性、薬剤選択
③感染兆候発赤・熱感・腫脹・疼痛・膿・悪臭抗菌的処置の要否、医師報告の要否
④壊死組織黒色壊死/黄色壊死/なしデブリードマンの要否・方法

例:「仙骨部に真皮までの褥瘡、滲出液中等量、感染兆候なし、創底に黄色壊死を一部認める」——ここまで言語化できれば、次の処置選択(ドレッシング材・薬剤・洗浄方法)が論理的に決まります。

3. 創傷治癒の基本——湿潤環境管理

なぜ「乾燥させない」が原則なのか

かつての褥瘡ケアは「創を乾燥させてかさぶたで治す」が常識でした。しかし1962年Winterらの動物実験で、湿潤環境のほうが上皮化が約2倍速いことが示され、世界の創傷ケアの考え方は大きく変わりました。

  • 上皮細胞の遊走がスムーズになる
  • 疼痛の軽減(神経終末が乾燥しない)
  • 痂皮形成を防ぎ、肉芽形成が促進される
  • ドレッシング材交換時の損傷が少ない

「ガーゼ+消毒」が時代遅れな理由

旧来の処置問題点
乾燥ガーゼでカバー滲出液を吸って乾燥固着→交換時に新生組織を剥がす
毎日のイソジン消毒細胞毒性で肉芽形成を遅延
創を乾燥させる上皮化を遅らせ、痂皮形成

TIME理論——創傷ベッド準備の4要素

要素内容介入
Tissue壊死組織の管理デブリードマン
Infection/Inflammation感染・炎症の管理抗菌的処置、医師報告
Moisture湿潤バランスの管理ドレッシング材選択
Edge創縁の管理創縁処理、上皮化促進

4. 洗浄——「正しい洗い方」がケアの土台

褥瘡処置の現場で、もっとも軽視されがちなのが洗浄です。洗浄はケアの土台——湿潤管理・薬剤・体位変換のすべてが、洗浄で創底が整っていることを前提に効きます。

正しい洗浄方法(温度・圧・量の3原則)
洗浄の3原則:適切な温度・圧・量

微温湯・生理食塩水での洗浄手順

  1. 石鹸で創周囲の皮膚を洗う(創そのものはこすらない)
  2. 微温湯(37〜38℃前後)または生理食塩水で十分量で洗い流す
  3. 滲出液・古い軟膏・痂皮を物理的に除去する
  4. 清潔なガーゼで創周囲を押さえ拭き

「こすらず、たっぷり、温度を確認」が3原則です。

適切な洗浄圧

  • 4〜15 psi(圧力の単位。19G針+35mLシリンジで生食を押し出すとちょうどこの範囲)が推奨——シリンジ+18Gや19G針で生食を勢いよく流す
  • シャワー水を直接当てる方法(創傷が安定していれば可)
  • 熱傷・MDRPUなど繊細な創は弱めに

消毒液の使いどころ・使ってはいけない場面

場面判断
慢性褥瘡で感染兆候なし消毒不要(細胞毒性で治癒遅延)
明らかな感染(膿・発赤拡大・悪臭)+滲出液/膿苔多い一時的に消毒が選択肢(医師指示、洗浄を優先しつつ補助的に)
デブリードマン直後で汚染が懸念される医師判断のもと、必要に応じて選択(一律ルールではない)
健常皮膚への予防消毒不要

「毎日の習慣で消毒」は、もうやらなくていいケアの代表例です。

5. ドレッシング材の選び方——3軸マトリクスで判断

ドレッシング材選択は、滲出液量・深さ・感染リスクの3軸で決めます。

ドレッシング材選択の3軸マトリクス
滲出液×深さ×感染リスクの3軸でドレッシング材を選ぶ

主要5タイプと特徴

タイプ主要商品名適する創
ハイドロコロイドデュオアクティブ®、テガダーム™ハイドロコロイド浅い創、滲出液少、感染なし
ポリウレタンフォームハイドロサイト®、メピレックス®滲出液中〜多、深さ問わず、感染なし〜軽度
ハイドロジェルグラニュゲル®、イントラサイト®ジェル乾燥した創、黒色壊死、感染なし
アルギン酸カルトスタット®、ソーブサン®滲出液多、出血あり、ポケット内充填
ハイドロファイバーアクアセル®、アクアセルAg滲出液多、ポケット内、Ag付は感染対策

3軸判断フロー

  • ①感染リスク最優先:明確な感染兆候→抗菌性ドレッシング(ハイドロファイバーAg・銀含有フォーム等)または抗菌外用薬(ゲーベン・カデックス・ユーパスタ)を選択し医師報告。ガーゼ管理は限定オプション
  • ②滲出液量で大別:少量→ハイドロコロイド/中等量→フォーム/大量→アルギン酸 or ハイドロファイバー/乾燥→ハイドロジェル
  • ③深さ・形状で微調整:浅い→シート型/深い・ポケット→充填型

「毎日交換」はもう過去のルール。滲出液漏れ・剥がれ・3〜7日の定期交換・感染兆候出現のいずれかで交換します。

6. 主要外用薬の使い分け

治癒段階別マッピング

段階創の状態主要薬剤
壊死期黒色・黄色壊死ありブロメライン軟膏、ゲーベン®クリーム、カデックス®軟膏
感染期滲出液多、悪臭、発赤ユーパスタ®コーワ軟膏、カデックス®軟膏、ゲーベン®クリーム
肉芽形成期赤色肉芽形成中プロスタンディン®軟膏、オルセノン®軟膏、フィブラスト®スプレー、アクトシン®軟膏
上皮化期創が浅く辺縁から上皮化アクトシン®軟膏、白色ワセリン

主要薬剤の特徴

  • ゲーベン®クリーム(スルファジアジン銀):抗菌作用+自己融解的デブリードマン。乾燥した黒色壊死を軟化。含水性高い
  • カデックス®軟膏(カデキソマー・ヨウ素):滲出液を吸収+ヨウ素抗菌。ヨウ素アレルギー・甲状腺疾患には禁忌
  • ユーパスタ®コーワ軟膏(精製白糖・ポビドンヨード):浸透圧で滲出液を吸収+抗菌
  • ブロメライン軟膏:タンパク分解酵素による化学的デブリードマン。健常組織を避けて塗布
  • プロスタンディン®軟膏:局所血流改善+肉芽形成促進。出血傾向には注意
  • オルセノン®軟膏:肉芽形成促進。感染なし、肉芽期に
  • フィブラスト®スプレー(トラフェルミン/bFGF):線維芽細胞増殖因子で肉芽形成・上皮化を強力に促進。1日1回、創面から約5cm離して噴霧し、5分以上は被覆せず放置してからガーゼ等で被覆(すぐ覆うと薬液がガーゼに吸われ作用が不十分に)。感染創・悪性腫瘍既往には不可
  • アクトシン®軟膏(ブクラデシン):局所血流改善+肉芽・上皮化促進。プロスタンディンより穏やかで長期使用しやすい

「滲出液を吸う薬剤・補う薬剤」の判別

滲出液が少ない・乾燥→含水性(ゲーベン)/多すぎる→吸水性(カデックス・ユーパスタ)/適度→中性(プロスタンディン・オルセノン・フィブラスト)。創の状態に合った方向性を選ぶ。

7. DESIGN-R各項目から処置を引く——逆引きフロー

で評価した結果を、処置選択にダイレクトにつなげる逆引き表です。

DESIGN-R各項目→処置の逆引き早見表
DESIGN-Rの各項目から処置を逆引きできる早見表

D(深さ)別の処置方針

スコア処置の方向性
d1(持続発赤)除圧と観察強化、皮膚保護フィルム
d2(真皮まで)湿潤管理(ハイドロコロイド・薄型フォーム)
D3(皮下組織まで)滲出液量に応じてフォーム/アルギン酸
D4(皮下を超える)充填型ドレッシング、医師報告検討
D5(関節腔・体腔)即医師報告、外科的対応
DDTI(DTI疑い)経過観察+医師報告。1〜2週で急速進行の可能性
DU(判定不能)デブリードマン後に再評価

E(滲出液)量別ドレッシング

  • e1(少量)→ハイドロコロイド
  • e3(中等量)→ポリウレタンフォーム
  • E6(多量)→アルギン酸、ハイドロファイバー、吸水性外用薬(カデックス・ユーパスタ)

I(感染・3C)への対応

  • i1(局所炎症兆候):観察強化、洗浄徹底、通気性のあるドレッシングまたは抗菌外用薬を選択
  • I3C(臨界的定着疑い):抗菌性ドレッシング(ハイドロファイバーAg等)or 抗菌外用薬(ゲーベン・カデックス・ユーパスタ)、医師相談
  • I3(局所感染):即医師報告、抗菌療法検討、抗菌性ドレッシングまたは抗菌外用薬を医師指示のもと選択
  • I9(全身感染):緊急医師報告、創処置より全身管理優先

N(壊死)の処置——デブリードマン3種

  • 自己融解的:ハイドロジェル等で湿潤環境を作り、自身の酵素で壊死を溶かす(時間がかかるが侵襲低い)
  • 化学的:ブロメラインなどタンパク分解酵素で壊死を除去(中程度の速度、健常組織を避けて塗布)
  • 外科的:メス・ハサミで切除(最速だが医行為、看護師は実施不可)

P(ポケット)の管理

ポケット内の十分な洗浄、充填型ドレッシング(ハイドロファイバー・アルギン酸)でポケット内を満たす。看護師だけでの判断は危険——医師相談が必須です。

8. 体位変換と除圧——「2時間ルール」の本当の意味

「2時間ごとの体位変換」は固定ルールではなく、個別の皮膚観察と体圧分散寝具を踏まえた個別計画が現代の標準です。下記はあくまで目安。実際の間隔は毎回の皮膚観察で発赤の有無・回復の遅さ・既往の褥瘡部位を確認したうえで調整します。

  • エアマット使用時(目安):2〜3時間、皮膚状態が安定していれば延長を検討
  • 通常マット(目安):2時間程度を上限の目安に
  • 皮膚状態が脆弱(高齢・低栄養・皮膚萎縮):1.5時間程度を目安に皮膚反応を見ながら短縮
  • 既に発赤あり:30分〜1時間程度の頻回観察、発赤回復を確認
体位変換の30度ルールとずれ力対策
30度側臥位(正解)と90度側臥位(NG)の比較。踵は浮かせる

ポジショニングの30度ルール

側臥位を取るとき、完全な90度側臥位は禁忌です。大転子・腸骨稜が直接圧迫され、新たな褥瘡の原因に。体幹を30度傾け、クッションで背中・膝間を支持します。

「ずれ力」を減らすコツ

  • 不要な高挙上は避ける——食事・呼吸状態など医学的に必要な場合を除き、ずれ力対策として高挙上を漫然と続けない。必要時は仙骨部のずれと皮膚状態を見ながら最小限に
  • 体位変換時は「持ち上げて移動」(引きずらない)、スライディングシート活用
  • かかとはマットから浮かせる(ヒールガード・枕)

9. スキンケア——保湿・保護で予防と再発防止

褥瘡予防・再発防止には、乾燥した皮膚を放置しないのが基本。入浴後・清拭後の5分以内の塗布が最も効果的です。

保湿剤特徴
白色ワセリン安価、刺激少、撥水性
ヘパリン類似物質(ヒルドイド®)保湿+血行促進
尿素配合(ケラチナミン®等)角質軟化(踵部の硬い皮膚に)

IAD(失禁関連皮膚炎)と褥瘡は併存しやすい。IAD=浸軟・化学刺激でおむつ接触部全般に不整な発赤、褥瘡=圧迫・ずれ力で骨突出部に境界明瞭な創。両方ある場合はそれぞれに合った処置を。

10. 栄養管理との連動

創傷治癒に必要な栄養素:タンパク質・亜鉛・ビタミンC・ビタミンA・アルギニン。

血清アルブミン値(Alb)は参考指標のひとつです。Albは半減期20日で急性炎症でも下がるため、単独では栄養状態を確定できません。

  • Alb 3.5g/dL以上:栄養面から創傷治癒の妨げになる可能性は比較的低い
  • Alb 3.0〜3.5g/dL:軽度低下、栄養介入を検討する目安
  • Alb 3.0g/dL未満:治癒遅延のリスクが高まる、積極的な介入を考えるレンジ

判断はプレアルブミン(半減期2日)・体重変化・食事摂取量・全身状態と併せて総合評価します。などのスクリーニングで低栄養が示唆されたら管理栄養士・医師と連携。アルギニン・亜鉛・コラーゲンペプチド配合の経口栄養補助食品(アルジネード®、ブイ・クレス®等)も検討します。

11. WOCナース不在時のエスカレーション基準

WOCナース不在の現場では、看護師が判断軸を持って動くことが安全管理の要。コールのタイミングを明確にすると、報告する看護師も、受ける医師も動きやすくなります。

★★★ 即医師コール

  • 明確な感染兆候(発赤拡大、熱感、膿、悪臭、急速進行)
  • 全身症状(発熱、CRP上昇、白血球増加、意識低下)
  • 急速な創進行(1日で目に見えて悪化)
  • DTI疑い(紫色変色、水疱形成)
  • D5(関節腔・体腔到達)

★★ 早期相談(数日以内)

  • ポケット拡大、新規ポケット形成
  • 2週間以上スコアが下がらない・悪化傾向
  • 壊死組織が硬く広範(外科的デブリードマン要検討)
  • 臨界的定着疑い(3C)
  • 疼痛増強(処置時以外の持続痛)

★ 定期相談(次回回診時)

  • ドレッシング材・薬剤の方針確認
  • 新規ケア導入の相談、改善経過の共有

SBARでの報告テンプレ例(感染兆候)

S:◯号室の◯◯さん、仙骨部褥瘡に感染兆候が出てきたためご報告します

B:入院時よりブレーデン12点、3日前に仙骨部d2発生、ハイドロコロイドで管理中

A:本日の処置で創周囲の発赤拡大、熱感、膿様の滲出液を認めます。DESIGN-Rは前回d2-e1-s3-i0-g1-n0-p0=5から、d2-e3-s3-i3-g1-n0-p0=12へ悪化。発熱は37.8℃あり

R:抗菌療法の追加と局所処置の方針見直しをお願いします。ご指示までの間の対応(抗菌性ドレッシングへの切替えなど)もご相談したいです

12. やってはいけない処置——よくある誤解5選

  1. 消毒の乱用——「毎日イソジン消毒」は時代遅れ。消毒液は細胞毒性で肉芽形成を遅延。明確な感染兆候があるときだけ一時的に。洗浄こそが感染対策の主役
  2. ガーゼの乾燥固着——ガーゼが滲出液で乾燥して創に固着、剥がす時に新生肉芽を一緒に剥がす。湿潤管理に切り替え
  3. 過度な洗浄圧——強すぎる洗浄圧は肉芽組織を傷め、出血や疼痛。「こすらず、たっぷり」が原則
  4. ハイドロコロイドの感染創への使用——密閉性が高く、感染創では適さないことがある(嫌気性菌に有利・感染兆候の評価が遅れやすい等)。感染時は抗菌性ドレッシングまたは抗菌外用薬を選択、ガーゼ管理は限定オプション
  5. 体位変換の機械的ローテーション——「2時間ごとに右→左→仰臥位」を機械的に繰り返すだけでは不十分。個別の皮膚状態を毎回観察、30度側臥位を意識

13. 申し送り・記録テンプレ

写真記録のルール

  • 同じ部位を毎回同じ体位・角度・距離で撮影(体位が違うと皮膚の伸びで創の形・大きさが変わって見えるため)
  • 創の横にスケール(メジャー・定規)を当てる
  • 光環境を一定に(自然光がベスト)
  • 電子カルテに添付してチーム全員が見られるように

DESIGN-R+ドレッシング材+次回処置予定

仙骨部褥瘡、本日(◯月◯日 14時)処置

DESIGN-R:d2-e3-s3-i0-g1-n0-p0 = 7(前回比 +1、滲出液増加)

ドレッシング:ハイドロサイト®プラス(中サイズ)

交換予定:明後日(◯月◯日午前)または滲出液漏れ時

観察ポイント:感染兆候の出現、滲出液量の変化

次の方針候補:滲出液さらに増加なら外用薬(カデックス)併用検討、感染兆候なら医師報告

14. 落とし穴になりやすい5場面

①仙骨部褥瘡で見逃される深部進行

表面が小さく見えても深部に大きな空洞があることが。ポケット形成・DTI疑い(紫色変色、水疱)を必ず確認、頻回観察。

②踵部の見落とし

動脈血流が乏しく治癒が遅い部位。毎日両踵を観察、ヒールガード・枕でマットから浮かせる。

③MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)

SpO2プローブ(指先・耳介)、酸素マスク・NPPVマスク(鼻根部・頬・耳介)、ギプス・シーネ、弾性ストッキング、経鼻胃管、膀胱留置カテーテル等。機器装着部位は3〜4時間ごとに観察、位置を定期的にずらす。

④終末期の褥瘡

「治す」ではなく「苦痛軽減・尊厳保持」を目標に。過度な体位変換・処置で患者を疲労させない。家族への説明と緩和ケアチームとの連携。

⑤在宅復帰時の引き継ぎ

DESIGN-Rスコア+ドレッシング材+写真を退院サマリーに添付、訪問看護ステーションへの直接連絡で方針共有、家族にも処置方法を実演してもらう。

15. よくある質問(Q&A)

Q1. 外用薬とドレッシング材、併用していいですか?

A. 基本的には併用OKですが、薬剤と材料の方向性(吸水性 vs 含水性)が一致しているかを確認。例:高吸水性外用薬(カデックス)+高吸水性ドレッシング(ハイドロファイバー)は乾燥しすぎる。抗菌作用の強い薬剤+密閉性ドレッシングも避ける。

Q2. 黒い壊死、自分でデブリードマンしていいですか?

A. 外科的(メス・ハサミ)デブリードマンは医行為で看護師は実施不可。自己融解的(ハイドロジェル)と化学的(ブロメライン)は実施可能。硬く厚い黒色壊死は医師・形成外科にコンサルト。

Q3. 滲出液が多い創、どう対応すればいいですか?

A. ①吸水性の高いドレッシングへ変更(ポリウレタンフォーム→アルギン酸→ハイドロファイバー)→②吸水性外用薬を併用(カデックス・ユーパスタ)→③悪臭・性状変化があれば感染を疑い医師報告→④栄養状態・全身状態も再評価。

Q4. 水道水で洗浄してもいいですか?

A. 使用OKです。日本褥瘡学会・英国NICE・Cochrane reviewでも生食と治癒率・感染率に有意差なし。むしろ十分な量を使える・シャワーで一気に洗い流せるメリット。微温湯(37〜38℃)で流水使用。免疫不全患者・血流不良創では生食優先。

Q5. かさぶた(痂皮)ができたら治る証拠じゃないんですか?

A. 昔はそう考えられていましたが、慢性褥瘡では痂皮形成は治癒を遅らせる障害物です。上皮細胞は痂皮の「下」を遊走するため、湿潤環境のほうが約2倍速い(Winter 1962)。例外として踵部の安定した乾燥痂皮(dry stable eschar)は生物学的ドレッシングとして温存することもあるが、医師判断が前提。

Q6. ポケットがあると治らないですか?

A. ポケットは自然には閉じにくいことが多く、外科的切開が必要なケースも。看護師の対応:ポケット内の十分な洗浄、充填型ドレッシング(ハイドロファイバー・アルギン酸)でポケット内を満たす、写真と測定で経過を追う、拡大傾向・治癒停滞があれば医師報告。

Q7. DESIGN-Rのスコアが下がらない時、何を疑えばいいですか?

A. 2〜3週間下がらない/悪化傾向のときは:①感染(3C・臨界的定着の見落とし)→②栄養状態(Alb・体重・摂取量)→③除圧不足→④ケア方針のミスマッチ→⑤基礎疾患の影響(糖尿病・PAD・ステロイド)。原因が絞れなければも参照、主治医・皮膚科にコンサルト。

Q8. 処置を家族にやってもらってもいいですか?

A. 可能です。在宅復帰では家族による処置が前提になることも。3ステップで指導:①見せる→②やってもらう→③任せる。家族にお願いできる範囲は洗浄・パッチ型DR交換・観察記録。デブリードマン・ポケット内処置は不可。「すぐ連絡してほしいサイン」リストを冷蔵庫に貼っておけるよう渡すと不安が減ります。

Q9. お風呂に入っていいですか?

A. 創の状態が安定し、感染兆候がなければシャワー浴は推奨。湯船浸かり込みは創がある間は避ける。創周囲は石鹸OK、創そのものはシャワーの流水で。浴後は清潔タオルで押さえ拭き+すぐにDR貼り直し。

Q10. 在宅・家族にどう指導すればいいですか?

A. ①観察ポイント(発赤・滲出液・痛み・発熱)、②処置方法を実演で見せる、③交換タイミングを具体的に、④必要物品の入手方法、⑤すぐ連絡すべきサイン、⑥訪問看護ステーションとの連携(写真共有・電話相談)。「家でOK/すぐ連絡」の境界を明確に。

まとめ——褥瘡ケアをチームで揃えるために

  • ✅ 創を見たら4つの軸(深さ・滲出液・感染・壊死)を3秒で言語化——主観の話を客観の話に変える
  • ✅ DESIGN-R各項目→処置の逆引きで、評価から処置までを一気通貫に
  • ✅ ドレッシング材は3軸(滲出液量×深さ×感染リスク)で選ぶ——商品名暗記より判断軸
  • ✅ 湿潤環境管理+洗浄が基本——「ガーゼ+消毒」は見直し対象
  • ✅ WOCナース不在の現場では「即報告/早期相談/定期相談」の3段階エスカレーション
  • ✅ やってはいけない処置5選を覚えて、ケアの質を底上げ

「先輩によってドレッシング材の選び方が違う」「消毒する/しないが人によって違う」のは、あなたのスキル不足ではなく、チームのフォーマットがまだ揃っていないということ。この記事を職場のカンファレンスや勉強会で共有して、チームで処置軸を揃えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。

参考・根拠

  • 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」
  • 日本褥瘡学会「改定DESIGN-R®2020 Consensus Document」
  • 日本褥瘡学会「在宅褥瘡予防・治療ガイドブック」
  • 厚生労働省「褥瘡対策に関する診療計画書」関連通知
  • TIME理論(Wound Bed Preparation, Schultz GS et al., 2003)
  • 主要メーカー公式情報(マルホ褥瘡辞典・アルメディアWEB ほか)

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。