スケール・評価

疼痛スケールの使い分け|NRS・VAS・フェイススケールの評価と報告のコツ

2026-04-12

この記事でわかること

  • ✓NRS・VAS・フェイススケールの違いと使い分け
  • ✓スコアをケアや薬剤選択にどうつなげるか
  • ✓鎮痛薬投与後の再評価の考え方
  • ✓報告での伝え方と現場でよくある疑問

「痛いそうです」——この報告で、医師は何を判断できるでしょうか。

どのくらい痛いのか。前回と比べて良くなっているのか。鎮痛薬は効いたのか。痛みを数値化することで、報告の精度もケアの方向性も変わります。

1. なぜ「痛みの数字」が必要なのか

「痛い」だけでは伝わらない

「患者さんが痛いと言っています」「結構痛そうです」——現場ではこうした報告が少なくありません。でも、「結構痛い」がNRS 4なのかNRS 8なのかで、対応はまったく変わります。数値がなければ、医師は判断材料が足りないまま指示を出すことになります。

スコアは「次のアクション」のために使う

疼痛スケールの本来の役割は、痛みの強さを客観的に記録し、それをもとに次の対応を考えることです。

  • 前回NRS 7 → 鎮痛薬投与後にNRS 3 → 効果あり、経過観察
  • 前回NRS 7 → 鎮痛薬投与後もNRS 6 → 効果不十分、医師に報告

数字があるからこそ、「効いたのか・効いていないのか」が明確になります。

2. 3つの疼痛スケールの基本

NRS・VAS・フェイススケールの概要図
上:NRS(0〜10の数値)/中:VAS(線上に印をつける)/下:フェイススケール(表情で伝える)

NRS(Numerical Rating Scale)——0〜10の数字で伝える

最も広く使われている疼痛スケールです。0を「痛みなし」、10を「想像できる最大の痛み」として、患者さんに口頭で聞きます。

メリット:道具不要。いつでもどこでも使える。
デメリット:数字の概念を理解できない患者さん(乳幼児・重度認知症など)には使えない。

VAS(Visual Analogue Scale)——線上に印をつける

10cmの水平な直線の左端を「痛みなし」、右端を「最悪の痛み」として、患者さんに今の痛みの位置に印をつけてもらいます。

メリット:連続した数値で精密な経時評価が可能。
デメリット:専用のスケールが必要。高齢者や認知機能低下のある患者さんには難しい場合がある。

フェイススケール——表情で伝える

表情のイラスト(笑顔〜泣き顔)を見せて、「今の痛みに一番近い顔はどれですか?」と聞きます。

メリット:言語的な理解力を必要としない。小児・自己申告可能な認知症・言語障害のある患者さんにも使える。
デメリット:痛みだけでなく感情(不安・悲しみ)も反映されやすい。自己申告自体が困難な患者さんには適さない(その場合は行動観察スケールへ)。

3. どの患者にどのスケールを使う?

まずNRSで評価できるかを考える → 難しければフェイススケール。この2ステップでほとんどの場面に対応できます。

スケール適する患者
NRS大半の成人患者(数字の概念を理解でき、口頭でやりとりできる)
フェイススケール小児(3〜7歳程度)・自己申告可能な認知症・言語障害・外国人患者
VAS研究・臨床試験・慢性痛の精密な経時追跡

一般病棟ではNRSが中心で、VASは慢性痛の精密な経時追跡などで用いられます。

4. スコアをケアにつなげる

痛みの強さだけでなく「性質・部位・変化」もセットで評価する

評価項目聞き方の例
強さ(NRS)「0〜10でどのくらいですか?」
部位「どこが一番痛いですか?」
性質「ズキズキ?ジンジン?締めつけるような?」
持続か間欠か「ずっと痛い?波がある?」
増悪・緩和因子「動くと痛い?安静にすると楽?」
日常生活への影響「痛みで眠れない?食事が進まない?」

スコアと薬剤選択の関係

WHO三段階除痛ラダーでは、痛みの強さに応じて段階的に薬剤を選択する考え方が示されています。以下は、このラダーの考え方をNRSと対応させた教育的な目安です。

痛みの段階NRSの目安薬剤の例
軽度1〜3アセトアミノフェン・NSAIDs
中等度4〜6弱オピオイド(トラマドールなど)±NSAIDs
高度7〜10強オピオイド(モルヒネなど)±NSAIDs

※NRSの数値区分はWHOが公式に定めたものではなく、教育的な目安です。がん疼痛を中心とした考え方であり、すべての疼痛にそのまま当てはまるわけではありません。実際の薬剤選択は医師の判断によります。

鎮痛薬投与後の再評価

鎮痛薬を投与したら、投与前と投与後のNRSを必ずセットで記録します。

※以下は各薬剤の添付文書に記載された薬物動態(Tmax)を参考にした一般的な目安です。

薬剤投与経路再評価の目安
ロキソプロフェン(ロキソニン®)経口30分〜1時間後
セレコキシブ(セレコックス®)経口1〜2時間後(効果発現がやや遅め)
アセトアミノフェン(カロナール®)経口30分〜1時間後
ジクロフェナク坐薬(ボルタレン®坐)直腸内30分〜1時間後
静注鎮痛薬静脈内15〜30分後

※薬剤の種類や投与経路によって異なります。施設の基準や医師の指示に従ってください。

注意:急性期に「NRS 10→5に改善した」としても、NRS 5で横ばいが続いているなら「まだ痛い」ことに変わりありません。改善したからと安心せず、経時的にスコアを追い続けることが大切です。

5. 報告で使える伝え方

自然言語の報告スケールで伝えた場合
「痛いそうです」「NRS 7です」
「薬飲んだけどまだ痛いみたいです」「ロキソプロフェン内服1時間後、NRS 7→6で改善が乏しいです」
「だいぶ落ち着いたようです」「NRS 7→3に改善しています」

報告例

「○○さんの創部痛についてご報告です。現在NRS 7で、ズキズキする持続的な痛みを訴えています。体動時に増強します。鎮痛薬の指示をいただけますか。」
「○○さん、14時にロキソプロフェンを内服しましたが、1時間経過してもNRS 7→6とほぼ変化がありません。追加の指示をいただけますか。」

数字+変化+状況をセットで伝えることで、医師の判断が速くなります。

6. よくある疑問とQ&A

Q. 患者さんが毎回「10」と言う——どう対応する?

A. 「10は、これまでに経験した中で一番つらい痛みです」と基準を改めて説明し直すことが有効です。それでも10と答える場合は、数字だけに頼らず、表情・体動・バイタルサイン・日常生活への影響なども合わせて評価します。

Q. 安静時と体動時、どちらで評価する?

A. 基本的には両方記録するのが理想です。安静時NRS 2でも体動時NRS 7であれば、離床やリハビリに支障があります。特に術後は「安静時痛」と「体動時痛」を分けて評価することが推奨されています。

Q. NRSとフェイススケール、両方使ってもいい?

A. 使えます。ただし同じ患者さんには同じスケールを継続して使うのが、経時比較の精度を保つうえで重要です。記録上も、使用したスケール名とそのスコアをそのまま記載するのが基本です。

Q. 痛みを訴えない患者の評価はどうする?

A. 意識障害や認知症で痛みを言語化できない患者さんには、行動観察による評価が必要です。表情(しかめ面)、体動(体をこわばらせる)などの行動的サインに加え、バイタルサインの変化も手がかりになりますが、バイタルサインだけでは痛みの評価として十分ではありません。BPS(Behavioral Pain Scale)やCPOT(Critical-Care Pain Observation Tool)などの行動評価スケールを活用し、複数の指標を組み合わせて判断することが重要です。

Q. 痛みを確認するタイミングや頻度は?

A. 基本的にはバイタルサイン測定時にセットで確認するのが効率的です。術後や急性期では、鎮痛薬投与前後・体位変換時・リハビリ前後など、痛みが変動しやすいタイミングでも評価します。確認するタイミングをチームで統一しておくと、経時比較の精度が上がります。

Q. 聞き方によって患者さんの答えが変わることはない?

A. あります。「痛みは大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫です」と答えやすくなり、「今の痛みは0〜10でどのくらいですか?」と聞くと正直なスコアが出やすくなります。聞き方をチームで統一することが、評価のばらつきを減らすうえで重要です。

Q. 鎮痛薬は食後に飲まないとダメ?

A. NSAIDs(ロキソプロフェンなど)は胃粘膜への負担があるため、食後の服用が推奨されることが多いです。セレコキシブ(セレコックス®)はCOX-2選択的阻害薬で、従来のNSAIDsに比べて胃粘膜への負担が少ないとされています。アセトアミノフェンは胃への負担が比較的少なく、食事のタイミングに関わらず服用できます。具体的な服用タイミングは医師・薬剤師の指示に従ってください。

まとめ

✅ NRSが第一選択。数字で伝え、数字で追う

✅ NRSが難しい患者さんにはフェイススケールを使う

✅ スコアだけでなく、痛みの性質・部位・変化もセットで評価する

✅ 鎮痛薬投与後は必ず再評価して、投与前後のスコアをセットで記録する

✅ 聞き方・タイミングをチームで統一し、評価のばらつきを減らす

「NRS 7です」の一言が、医師の判断を速くし、患者さんの痛みを早く和らげることにつながります。

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参考・根拠

  • 日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」
  • 日本ペインクリニック学会 痛みの評価法
  • WHO三段階除痛ラダー
  • Jensen MP, Karoly P. Self-report scales and procedures for assessing pain in adults. Handbook of Pain Assessment, 3rd ed.(2011年)
  • Wong-Baker FACES Foundation. Wong-Baker FACES® Pain Rating Scale Usage Guidelines.
  • Hicks CL, et al. The Faces Pain Scale – Revised: toward a common metric in pediatric pain measurement. Pain. 2001;93(2):173-183.

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。