スケール・評価

MNA-SF(簡易栄養状態評価)の使い方|6項目の評価ポイントとスコアをケアにつなげる考え方

2026-04-22

この記事でわかること

  • ✓MNA-SFの6項目の意味と評価のポイント
  • ✓スコアの読み方と「低栄養のおそれあり」への対応
  • ✓スコアを栄養士・医師への報告や看護計画に活かす方法
  • ✓現場でありがちな誤評価と注意点

「栄養のことは栄養士さんに任せておけばいい」

そう思っていませんか? 実は、低栄養を最初に拾い上げるのは、ベッドサイドにいる看護師であることが多いのです。MNA-SFは、その「気づき」を形にするためのツールです。

1. MNA-SFとは——何のためのスクリーニングか

「低栄養かも」を5分で拾い上げるツール

MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form:簡易栄養状態評価表)は、65歳以上の高齢者の栄養状態をスクリーニングするためのツールです。高齢者の栄養評価を専門とする研究者グループによって開発され、現在はNestlé Nutrition Instituteの公式サイトからフォームやガイドが提供されています。世界中で広く使われています。

6つの質問に答えるだけで、約5分で「低栄養のリスクがあるかどうか」を判定できます。血液検査は不要で、ベッドサイドで完結できるのが大きな特徴です。

「血液データで栄養状態はわかるのでは?」と思うかもしれません。たしかにアルブミン値などは参考になりますが、アルブミンは炎症や脱水の影響も受けるため、栄養状態を単独で反映する指標ではありません。MNA-SFは食事・体重・身体機能・精神状態を総合的に見るため、血液データだけでは見えない栄養リスクを拾い上げることができます。

Full MNAとの違い——スクリーニングとアセスメントの役割分担

MNA-SF(6項目)Full MNA(18項目)
目的スクリーニング(ふるい分け)詳細な栄養アセスメント
所要時間約5分約15分
使い方まずMNA-SFで拾い上げるMNA-SFで「おそれあり」以下なら実施

実務では、まずMNA-SFでリスクを拾い上げ、陽性ならFull MNAなどで詳細な評価を行い、必要に応じてGLIM基準(後述)で低栄養の診断に進むという流れが基本です。

どんな場面で使うか

  • 入院時スクリーニング:入院時の栄養評価として
  • 定期評価:月1回や状態変化時に
  • 在宅訪問:訪問看護での栄養リスク評価
  • 施設入所時・定期評価:介護施設での栄養管理

褥瘡やADLの評価と同じタイミングでMNA-SFも実施すると、包括的なアセスメントになります。

2. 6項目の評価ポイントを現場目線で解説

MNA-SFの6項目を図解した一覧
MNA-SFの6項目。食事量・体重・活動・ストレス・精神状態・体格を総合的に評価する。

A. 過去3か月間の食事量の減少

選択肢点数
著しい食事量の減少0点
中等度の食事量の減少1点
食事量の減少なし2点
現場のポイント:「食欲はありますか?」と聞くと、多くの患者さんは「はい」と答えます。具体的に聞くのがコツです。「3か月前と比べて、ごはんの量は変わりましたか?」「主食はどのくらい食べていますか?」と聞くと、実態が見えやすくなります。
認知症の場合:本人の申告と実際の摂取量が乖離することがあります。可能であれば食事の残量を観察したり、家族や介護者から情報を得ることが大切です。

B. 過去3か月間の体重減少

選択肢点数
3kg以上の減少0点
わからない1点
1〜3kgの減少2点
体重減少なし3点
現場のポイント:「わからない」は1点であり、体重が不明であること自体がリスクサインです。体重測定を気にする患者さんには「栄養状態の確認のために体重を測らせてください」と目的を伝えると協力を得やすくなります。

C. 自力歩行・日常の動作

選択肢点数
寝たきりまたは車いす0点
ベッドや車いすから起き上がれるが外出しない1点
自由に外出できる2点
現場のポイント:活動量の低下は消費エネルギーだけでなく、食欲や筋肉量にも直結します。ADL評価(Barthel Indexなど)と合わせて見ると、栄養と活動の関係が立体的に見えてきます。

D. 過去3か月間の精神的ストレスまたは急性疾患の有無

選択肢点数
あり0点
なし2点
現場のポイント:この項目は「入院しているかどうか」ではなく、急性疾患の発症・手術・感染・家族の死別など、食事や全身状態に影響する出来事があったかで判断します。入院患者を機械的に0点とせず、過去3か月の経過を確認しましょう。急性期の一時的な食欲低下と慢性的な低栄養は区別して考え、回復後の再評価を忘れないようにします。

E. 神経・精神的問題

選択肢点数
強度の認知症またはうつ状態0点
軽度の認知症1点
精神的問題なし2点
現場のポイント:認知症やうつは食事摂取に直接影響します。認知症では食べ方がわからなくなる、注意が持続しないなどの問題が起き、うつでは食欲そのものが低下します。日常のケアの中で気づいた変化を記録しておくことが、正確な評価につながります。

F. BMI(またはふくらはぎ周囲長)

BMIが算出できる場合:

選択肢点数
19未満0点
19以上21未満1点
21以上23未満2点
23以上3点

BMIが算出できない場合 → ふくらはぎ周囲長(CC)で代替:

選択肢点数
31cm未満0点
31cm以上3点
使い分け:原則はBMIが算出可能ならBMIを使うこと。身長・体重が測定できない場合(立位困難、寝たきりなど)にCCを代替として使います。
浮腫・腹水に注意:浮腫や腹水がある場合、BMIは栄養状態を正しく反映しません。体重が増えていても実際には筋肉量が減少していることがあります。浮腫がある場合は、その旨を記録に残し、BMIの数値だけで判断しないよう注意します。

ふくらはぎ周囲長(CC)の測定方法

  • 標準体位:座位で膝を90度に曲げた状態で測定
  • ふくらはぎの最も太い部分にメジャーを巻く
  • 皮膚に食い込まない程度の圧で測定
  • 臥床患者で座位が取れない場合は、公式ガイドの付録手順または施設の手順に従う

3. スコアの読み方——数字の先にあるもの

3つの判定区分

合計スコア判定
12〜14点栄養状態良好
8〜11点低栄養のおそれあり(At risk)
0〜7点低栄養(Malnourished)

「低栄養のおそれあり(8-11点)」が一番多い——次に何をする?

臨床で最もよく出会うのが、この8〜11点の「低栄養のおそれあり」です。「低栄養」ほど切迫していないため見過ごされがちですが、ここで介入できるかどうかが、その後の経過を左右します。

1

どの項目が引っかかっているかを確認する

合計スコアだけでなく、A〜Fのどこで点数が低いかを見る

2

栄養士に情報を共有する

スコアと気になる項目を伝え、栄養介入の必要性を相談

3

詳細評価に進む

施設の方針に従い、Full MNAなどで詳細な栄養アセスメントを行い、必要時はGLIM基準で診断へ

4

看護計画に栄養の視点を組み込む

食事環境の整備、食形態の検討、補助食品の検討など

合計スコアだけでなく、どの項目が引っかかったかを見る

同じ10点でも、意味はまったく違います。

  • 食事量(A)と体重(B)が低い → 摂取量の問題。食事環境・食形態・嗜好の確認が優先
  • 活動(C)と精神(E)が低い → 活動量・精神面の問題。リハビリやメンタルケアとの連携が重要
  • BMI(F)だけが低い → 体格の問題。やせの原因検索が必要

4. スコアをケアにつなげる

栄養士・医師への報告——何を伝えるか

「MNA-SFで8点でした」だけでは、次のアクションにつながりにくい。報告のポイントは:

  • スコアと判定:「MNA-SFは○点で、低栄養のおそれありです」
  • 引っかかった項目:「特にA(食事量)とB(体重)で点数が低いです」
  • 看護の観察情報:「食事は主食3割程度しか摂れていません」「3か月で2kg減っています」
  • 気になる背景:「義歯が合っていない様子があります」「最近元気がなく、うつ傾向かもしれません」

スコアに観察情報を添えて報告することで、栄養士や医師が具体的な介入計画を立てやすくなります。

ミニケース:MNA-SF 9点の患者さん

82歳女性、大腿骨頸部骨折術後。MNA-SF 9点(低栄養のおそれあり)。内訳:A(食事量)1点・B(体重)3点・C(活動)0点・D(ストレス)0点・E(精神)2点・F(BMI)3点。

食事量が減少しており、術後で活動もできていない。食事場面を観察すると、義歯が合わず硬いものを避けている様子。

→ 栄養士に「MNA-SF 9点、食事量の減少あり。義歯不適合で副菜を残しがち。食形態の見直しをお願いしたい」と報告。並行して歯科への相談を依頼。

スコアの内訳から何が原因かを考え、具体的な情報を添えて報告する——この流れが大切です。

看護計画への反映

  • 食事環境の整備:食事時の姿勢、テーブルの高さ、照明、においの環境
  • 食形態の検討:咀嚼・嚥下に問題がないか、食形態が合っているか
  • 補助食品の検討:栄養補助食品(ONS)の提案を栄養士と相談
  • 経口摂取の工夫:好きな食べ物の確認、少量頻回の食事、間食の活用
  • 口腔ケア:口腔内の問題(義歯不適合・口腔乾燥・口内炎)が食事量に影響していないか

「栄養のことは栄養士に任せる」のではなく、ベッドサイドで気づけることを看護の視点で拾い上げることが、多職種連携の出発点になります。

褥瘡・ADL低下・フレイルとの関連——他のアセスメントとつなげる

関連する問題つながり連携するアセスメント
褥瘡低栄養は褥瘡の発生リスクを高め、治癒を遅延させるDESIGN-R®
ADL低下活動量の低下 → 食欲低下 → 筋肉量減少の悪循環Barthel Index
フレイル低栄養はフレイルの主要な構成要素—
感染症低栄養は免疫機能を低下させ、感染リスクを高める—

DESIGN-Rのスコアが改善しないとき、栄養面を見直す手がかりとしてMNA-SFが役立ちます。

5. 現場でありがちな誤評価と注意点

認知症患者の食事量——本人の申告と実際のギャップ

認知症の患者さんに「食事は食べていますか?」と聞くと、「食べています」と答えることが多いです。しかし実際の摂取量を確認すると、主食も副菜もほとんど手をつけていないということがあります。

  • 食事場面を直接観察する(可能な範囲で)
  • 残食量を記録する
  • 家族や介護スタッフから情報を得る
  • 食事介助の必要性を評価する

浮腫・腹水がある場合——BMIが実態を反映しない

浮腫や腹水で体重が増加している場合、BMIは高く出るが実際には低栄養というケースがあります。

  • 浮腫の程度を記録に残す
  • 浮腫がある場合はCCでの代替を検討するか、BMIの数値に注意書きを添える
  • 体重の変動が浮腫によるものか、実際の体組成の変化かを区別する

急性期の一時的な食欲低下と慢性的な低栄養を混同しない

入院直後や手術後は、一時的に食事量が減ることは珍しくありません。この場合、MNA-SFのスコアは低く出ますが、それが慢性的な低栄養を反映しているとは限りません。急性期の評価では「現時点での栄養リスク」として記録しつつ、回復後に再評価することが重要です。

6. よくある疑問 Q&A

Q. MNA-SFはどのくらいの頻度で評価する?

A. 施設や状況によりますが、一般的には入院時と月1回程度、または状態変化時に再評価します。在宅では訪問ごとに簡易的に確認し、変化があれば正式に再評価するという運用もあります。施設の方針に従ってください。

Q. 65歳未満の患者にも使える?

A. MNA-SFは65歳以上の高齢者を対象に開発・検証されたツールです。65歳未満の患者には、SGA(主観的包括的栄養評価)やMUST(Malnutrition Universal Screening Tool)など、他のスクリーニングツールの使用が推奨されます。

Q. GLIM基準との関係は?

A. GLIM基準(Global Leadership Initiative on Malnutrition)は、低栄養の「診断基準」です。MNA-SFは「スクリーニング(ふるい分け)」、GLIMは「診断」という役割分担です。MNA-SFでリスクを拾い上げた後、Full MNAなどで詳細に評価し、必要に応じてGLIM基準で低栄養の診断に進む、という流れが整理されています。

Q. MNA-SFで「栄養状態良好(12-14点)」でも安心していい?

A. スコアが良好でも、個々の項目に気になる点があれば注意が必要です。例えば、合計12点でも体重が減少傾向にある場合は、経過を追う必要があります。MNA-SFはあくまでスクリーニングであり、臨床所見や血液データも合わせて総合的に判断してください。

まとめ

✅ MNA-SFは5分で栄養リスクを拾い上げるスクリーニングツール

✅ スコアだけでなく、どの項目が引っかかったかを見ることが大切

✅ 「低栄養のおそれあり」の段階で介入できるかが、その後の経過を左右する

✅ スコアに看護の観察情報を添えて報告することで、多職種連携の質が上がる

✅ 褥瘡・ADL・フレイルの評価とセットで実施すると、包括的なアセスメントになる

「栄養のことは栄養士に任せる」で終わらせず、ベッドサイドで気づいたことを形にする。MNA-SFは、その最初の一歩を支えるツールです。

参考・根拠

  • Nestlé Nutrition Institute「MNA® 公式ガイド」
  • Kaiser MJ, et al. (2009). Validation of the Mini Nutritional Assessment Short-Form (MNA®-SF). J Nutr Health Aging, 13(9), 782-788.
  • Vellas B, et al. (2006). Overview of the MNA - Its history and challenges. J Nutr Health Aging, 10(6), 456-463.
  • Cederholm T, et al. (2019). GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition. Clinical Nutrition, 38(1), 1-9.
  • 日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)「静脈経腸栄養ガイドライン 第3版」
  • 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版」(2022年)——栄養管理の章

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。