酸素流量とFiO2の換算|デバイス別の早見表と使い分け
2026-04-15
この記事でわかること
- ✓FiO2(吸入酸素濃度)の意味と、デバイスごとの換算表
- ✓なぜデバイスによってFiO2が変わるのか——その原理
- ✓デバイスの使い分けと、酸素投与の注意点
「酸素3L、FiO2いくつ?」
医師からの指示やカンファレンスで、こう聞かれたことはないでしょうか。
なんとなく「鼻カニュラ3Lだから……30%くらい?」と答えられても、根拠を持って即答できる人は意外と少ないかもしれません。
1. FiO2(吸入酸素濃度)とは何か
定義——吸入ガス中の酸素の割合
FiO2(Fraction of Inspiratory Oxygen)は、患者さんが吸い込むガスに含まれる酸素の割合を示す数値です。
普段、私たちが吸っている空気(室内気)の酸素濃度は約21%。これをFiO2で表すと0.21です。
表記の仕方
FiO2は小数で表記するのが正式です。
- 室内気:FiO2 0.21(= 21%)
- 酸素40%投与:FiO2 0.40
- 純酸素:FiO2 1.0(= 100%)
臨床では「FiO2 40%」のようにパーセントで表現されることもありますが、P/F比の計算などでは小数表記を使うため、両方の表記に慣れておくと便利です。
2. なぜデバイスによってFiO2が変わるのか
同じ「酸素3L/分」でも、使うデバイスによってFiO2は異なります。なぜでしょうか。
低流量システムのしくみ——患者の呼吸が混ざる
鼻カニュラや簡易酸素マスクは、低流量システムに分類されます。
低流量システムの特徴は、供給する酸素の量が患者さんの1回換気量より少ないこと。つまり、患者さんが息を吸うとき、デバイスから供給される酸素だけでは足りず、周囲の空気(室内気)も一緒に吸い込むことになります。
供給される酸素 + 室内気 = 実際に吸い込むガス
この「室内気がどれだけ混ざるか」によって、実際のFiO2が変わります。呼吸が速い・深い患者さんほど室内気の混入が多くなり、同じ流量でもFiO2は低くなる傾向があります。
高流量システムのしくみ——吸入ガスをすべて供給する
一方、ベンチュリーマスクなどの高流量システムは、患者さんの1回換気量を上回る量のガスを供給します。周囲の空気が混入しないため、設定した酸素濃度がそのままFiO2になるのが特徴です。
低流量デバイスのFiO2はあくまで「目安」
低流量デバイスでよく使われる「鼻カニュラ1Lで24%」などの数値は、平均的な呼吸パターンの成人を想定した目安です。実際のFiO2は患者さんの呼吸パターンによって変動します。
例えば、同じ鼻カニュラ3L/分でも:
- 呼吸が速く深い患者さん(頻呼吸・過換気)→ 1回に吸い込む量が多いため、室内気の混入が増え、実際のFiO2は目安より低くなる
- 呼吸が浅くゆっくりの患者さん → 供給される酸素の割合が相対的に高まり、実際のFiO2は目安より高くなる
この点を理解しておくことで、「同じ3Lなのにこの患者さんはSpO2が上がらない」といった場面でも、呼吸パターンの影響という視点でアセスメントができるようになります。

3. デバイス別 酸素流量とFiO2の早見表
鼻カニュラ(1〜6L/分)
最もよく使われるデバイスです。流量1L/分につき、FiO2が約4%ずつ上昇すると覚えておくと便利です。
| 酸素流量 | FiO2(目安) |
|---|---|
| 1L/分 | 約24% |
| 2L/分 | 約28% |
| 3L/分 | 約32% |
| 4L/分 | 約36% |
| 5L/分 | 約40% |
| 6L/分 | 約44% |
6L/分を超える流量は推奨されません。鼻粘膜の乾燥・損傷のリスクが高まるためです。6Lでも不十分な場合は、マスクへの変更を検討します。
簡易酸素マスク(5〜8L/分)
鼻と口の両方を覆うため、鼻カニュラより高いFiO2を供給できます。
| 酸素流量 | FiO2(目安) |
|---|---|
| 5L/分 | 約40% |
| 6L/分 | 約50% |
| 7L/分 | 約55% |
| 8L/分 | 約60% |
⚠ 5L/分未満では使用しません。マスク内に呼気(CO2を含む)が貯留し、再吸入することでPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧:血液中のCO2の量を示す値)が上昇する危険があります。これは現場でも起こりやすいミスです。
リザーバー付き酸素マスク(6〜10L/分)
マスクにリザーバーバッグ(貯留袋)が付いたデバイスで、高濃度の酸素を投与できます。
| 酸素流量 | FiO2(目安) |
|---|---|
| 6L/分 | 約60% |
| 7L/分 | 約70% |
| 8L/分 | 約80% |
| 9L/分 | 約85% |
| 10L/分 | 約90%以上 |
使用時は、リザーバーバッグが吸気時にしぼまないことを確認します。リザーバーマスクは、呼気の間にバッグに酸素を貯め、吸気時にその高濃度酸素を吸い込むしくみです。バッグがしぼむということは、補充が吸気に追いついておらず、不足分をマスクの隙間から室内気で補っている状態。つまりFiO2が下がります。バッグがしぼむ場合は流量を上げて対応します。
ベンチュリーマスク(設定濃度で固定)
ベンチュリーマスクは、専用のダイリュータ(色付きアダプター)を使って、酸素濃度を正確に設定できるデバイスです。
| ダイリュータの色 | 設定FiO2 | 必要な酸素流量 |
|---|---|---|
| 青 | 24% | 2L/分 |
| 白 | 28% | 4L/分 |
| 橙(オレンジ) | 31% | 6L/分 |
| 黄 | 35% | 8L/分 |
| 赤 | 40% | 10L/分 |
| 緑 | 60% | 15L/分 |
※メーカーによって色と流量の組み合わせが異なる場合があります。必ず使用する製品のラベルを確認してください。
ベンチュリーマスクは、患者さんの呼吸パターンに影響されず安定したFiO2を供給できるため、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などのII型呼吸不全の患者さんに適しています。
全デバイス早見表
| デバイス | 流量範囲 | FiO2範囲 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 鼻カニュラ | 1〜6L/分 | 24〜44% | 会話・食事可。6L超は不可 |
| 簡易酸素マスク | 5〜8L/分 | 40〜60% | 5L未満は使用禁止 |
| リザーバーマスク | 6〜10L/分 | 60〜90%以上 | 高濃度酸素が必要なとき |
| ベンチュリーマスク | 設定による | 24〜60% | 正確なFiO2が必要なとき |
4. デバイスの使い分け——何を基準に選ぶか
デバイスの対応範囲を知っておく
酸素投与のデバイスや流量は医師が指示しますが、看護師がデバイスの対応範囲を理解しておくことで、指示の意図がわかり、状態変化時の報告もしやすくなります。
各デバイスの第一選択の目安:
- FiO2 40%以下 → 鼻カニュラ
- FiO2 40〜60% → 簡易酸素マスク
- FiO2 60%以上 → リザーバーマスク
- 正確なFiO2の管理が必要 → ベンチュリーマスク
※あくまで目安です。実際のデバイス選択は、患者さんの呼吸状態・基礎疾患・快適さなども含めて医師が判断します。
例えば、鼻カニュラ6L(FiO2約44%)でSpO2が維持できない場合、「このデバイスの上限に近いので、マスクへの変更が必要かもしれません」と報告できます。
鼻カニュラ → 簡易酸素マスク → リザーバーマスクの流れ
一般的な酸素投与では、低濃度から始めて効果を見ながら段階的に上げていきます。
鼻カニュラ6Lでも酸素化が改善しない場合、次のステップとして簡易酸素マスクやリザーバーマスクに切り替えます。この切り替えの際は、外している間のSpO2低下に注意しながら、速やかに行います。
逆に、状態が改善してきた場合は、リザーバー → マスク → 鼻カニュラと段階的に下げていくのが基本です。SpO2だけでなく、呼吸数や呼吸パターン、患者さんの自覚症状も合わせて評価します。
COPD・II型呼吸不全ではベンチュリーマスクを選ぶ理由
COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性的な高CO2血症がある患者さんでは、高濃度の酸素投与がCO2ナルコーシスを引き起こすリスクがあります。
このような患者さんには、酸素濃度を正確にコントロールできるベンチュリーマスクが適しています。目標SpO2は88〜92%に設定されることが多く、「SpO2が低いから酸素を上げよう」と安易に流量を上げると危険です。
5. 酸素投与の注意点——知っておくべきリスク
CO2ナルコーシス——高濃度酸素が危険な患者
COPDなどで慢性的にCO2が高い患者さんに高濃度酸素を投与すると、CO2がさらに蓄積して意識障害に至ることがあります。これがCO2ナルコーシスです。
そのメカニズムは単純ではなく、複数の機序が関わっています:
- 低酸素ドライブの抑制:慢性的にCO2が高い患者さんでは、中枢化学受容体のCO2への反応が鈍くなり、代わりに低酸素が呼吸の刺激になっていることがある。高濃度酸素でこの刺激がなくなると、呼吸が抑制される。
- V/Qミスマッチの悪化:高濃度酸素により肺血管の低酸素性収縮が解除され、換気の悪い領域への血流が増加することで、ガス交換の効率が低下する。
- Haldane効果:酸素化が改善するとヘモグロビンからCO2が放出されやすくなり、血中のCO2がさらに上昇する。
いずれにしても重要なのは、慢性的な高CO2血症がある患者さんへの高濃度酸素投与は危険だということです。
COPDの既往がある患者さんへの酸素投与では、必ず医師の指示するFiO2を守り、SpO2の目標値を確認してください。
酸素流量の下限に注意
デバイスによって、使用できる最低流量があります。
- 簡易酸素マスク:5L/分以上(5L未満ではCO2再吸入のリスク)
- リザーバーマスク:6L/分以上(バッグが十分に膨らむ流量が必要)
「SpO2が安定してきたからマスクの流量を3Lに下げよう」という判断は危険です。流量を下げるなら、デバイス自体を鼻カニュラに切り替えるのが正しい対応です。
加湿の必要性
酸素は乾燥したガスです。高流量で長時間投与する場合、鼻腔や気道粘膜の乾燥を防ぐために加湿器の使用が検討されることがあります。
加湿の基準は施設や製品によって異なるため、施設のプロトコルに従ってください。
一般的には、低流量(1〜3L/分)では加湿は不要とされ、高流量では推奨される傾向があります。
6. FiO2を使った報告とアセスメント
P/F比——FiO2が使われるもう一つの場面
P/F比(PaO2/FiO2比)は、酸素化の効率を評価する指標で、主にICUや救急など重症管理の場面で使われます。計算式は「P/F比 = PaO2 ÷ FiO2」で、PaO2(動脈血酸素分圧)は動脈血ガス分析で測定される値です。
一般病棟の看護師が自分でP/F比を計算する場面は多くありませんが、カンファレンスや申し送りで出てきたときに、数値の意味がわかるだけで患者さんの重症度の理解が変わります。
P/F比の目安:
- 400以上:正常
- 300以下:酸素化障害あり
- 200以下:重度の酸素化障害(ARDS〈急性呼吸窮迫症候群〉の診断基準の一つ)
「P/F比が200を切っている」と聞けば、「酸素をかなり投与しているのに酸素化が悪い、重症な状態なんだ」とわかります。
FiO2の換算を知っておくことは、こうした場面でも役立ちます。
NEWSスコアとの関連
NEWSスコア(早期警告スコア)では、「酸素投与の有無」が評価項目の一つに含まれています。酸素を投与しているだけで2点が加算されます(NEWSの詳細はで解説しています)。
つまり、酸素投与中の患者さんは、SpO2が正常範囲であってもベースのリスクが上がっていることを意識する必要があります。
報告での伝え方
医師への報告では、酸素の流量だけでなくデバイスとFiO2も添えて伝えると、状態の全体像が伝わりやすくなります。
報告例:
「○○さん、鼻カニュラ3L(FiO2約32%)でSpO2が93%です。呼吸数は24回/分で、呼吸が浅い印象です。」
流量だけの報告:「酸素3Lで93%です」
デバイスとFiO2を添えた報告:「鼻カニュラ3L、FiO2約32%でSpO2が93%です」
デバイスとFiO2が加わることで、どのくらいの酸素を使ってその値を維持しているのかが伝わり、酸素化の状態をより正確に共有できます。
7. よくある疑問 Q&A
Q: 鼻カニュラ6L以上はなぜダメ?
A: 6L/分を超える流量では、鼻粘膜の乾燥や損傷のリスクが高まります。また、6L/分(FiO2約44%)以上の酸素濃度が必要な場合は、そもそも鼻カニュラでは対応能力を超えています。簡易酸素マスクやリザーバーマスクへの切り替えを検討してください。
Q: 簡易酸素マスクを低流量(1〜4L)で使ってはいけない理由は?
A: 簡易酸素マスクは鼻と口を覆う構造のため、マスク内に呼気が貯留します。5L/分以上の流量があれば呼気は洗い流されますが、流量が不足するとCO2を含んだ呼気を再び吸い込むことになり、PaCO2の上昇を招きます。流量を下げたい場合は、マスクのまま流量を下げるのではなく、鼻カニュラに切り替えるのが正しい対応です。
Q: 酸素投与中にSpO2が100%——流量を下げるべき?
A: SpO2 100%は、必要以上の酸素が投与されている可能性を示唆します。ただし、自己判断で流量を変更せず、医師に報告して指示を仰いでください。特に、術後は麻酔の影響で呼吸が不安定になりやすく、急変リスクがある患者さんでは状態が急に変わりうるため、安全マージンとしてあえて高めのFiO2が設定されている場合があります。
Q: 最近聞く「ハイフローセラピー(HFNC)」は、この記事のデバイスとどう違う?
A: この記事で紹介した鼻カニュラやマスクは、最大でも10〜15L/分程度の酸素を供給するデバイスです。一方、ハイフローセラピー(高流量鼻カニュラ酸素療法:HFNC)は、加温加湿した酸素を最大60L/分の高流量で投与するシステムで、FiO2を21〜100%まで正確に設定できます。一般病棟でも導入が進んでいますが、専用の機器が必要です。
Q: 酸素マスク中の食事はどうする?
A: 食事時には鼻カニュラに一時的に切り替えるなどの対応が必要です。切り替えの際は事前に医師の指示を確認し、SpO2をモニタリングしてください。
Q: 患者さんに「酸素はいつ外れますか?」と聞かれたら?
A: 不安の裏返しであることが多いです。安心感を持ってもらえるよう、現在の状態と今後の見通しを伝えましょう。
8. まとめ——デバイスと数字の関係を「わかって使う」ために
酸素流量とFiO2の関係は、覚えてしまえばシンプルです。
- 鼻カニュラ:1Lで24%、以降1Lにつき+4%(最大6L)
- 簡易酸素マスク:5〜8Lで40〜60%(5L未満は使用禁止)
- リザーバーマスク:6〜10Lで60〜90%以上
- ベンチュリーマスク:ダイリュータで正確にFiO2を設定
でも大切なのは、数字を暗記することだけではありません。
- なぜデバイスによってFiO2が変わるのか(室内気の混入という原理)
- デバイスの対応範囲(どのデバイスでどこまでカバーできるか)
- FiO2がわかると何に使えるのか(P/F比の計算、より精度の高い報告)
「酸素3L、FiO2いくつ?」——この質問に、根拠を持って答えられる。それが、酸素療法をより安全に、より効果的に行うための第一歩です。
参考・根拠
- 日本呼吸器学会:酸素療法マニュアル(酸素療法ガイドライン改訂版)
- British Thoracic Society (BTS): Guideline for oxygen use in adults in healthcare and emergency settings. Thorax. 2017;72(Suppl 1):ii1-ii90.
- JSEPTIC看護部会:P/F比 酸素化の評価
- アトムメディカル:吸入酸素濃度に応じたデバイスの選択
- 看護roo!:酸素療法のデバイスの選び方
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この記事を書いた人
臨床ナースラボ 管理者現役看護師
日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。