手技・処置

発熱時の対応|アセスメントの視点・クーリングの根拠・チームで揃えたい判断基準

2026-04-23

この記事でわかること

  • ✓発熱のメカニズムと3つのフェーズ(上昇期・ピーク期・下降期)
  • ✓「とりあえずクーリング」に根拠はあるのか
  • ✓解熱剤を使うタイミングの考え方
  • ✓報告で体温だけでなく「文脈」を伝える方法
  • ✓チームで揃えたい判断基準と話し合うべきポイント

「37.8度です。クーリングしますか?」

この質問に対する答えが、スタッフによって違う。解熱剤を使う基準も、報告のタイミングも、人によってバラバラ——そんな経験はないでしょうか。

発熱時の対応は「基礎的すぎて改めて教わらない」領域です。だからこそ、判断がバラつきやすい。この記事では、根拠に基づいて対応を整理し、チームとして判断基準を揃えるためのたたき台を提示します。

1. 発熱とは——体で何が起きているのか

セットポイント理論:脳が「設定温度」を上げている

発熱は、体温調節中枢(視床下部)が設定温度(セットポイント)を意図的に上げている状態です。感染や炎症によって産生されるサイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)がプロスタグランジンE2を介して視床下部に作用し、セットポイントが引き上げられます。

つまり、発熱は体が意図的に起こしている防御反応です。「体温が高い=悪い」ではなく、「なぜ体がセットポイントを上げているのか」を考えることがアセスメントの出発点になります。

発熱の3つのフェーズと体の反応

発熱は一本調子ではなく、3つのフェーズを経過します。このフェーズを理解すると、対応の判断が変わります。

フェーズ体の状態患者の訴え対応の方向性
上昇期セットポイントが上がり、体が熱を産生・保持悪寒・シバリング・「寒い」保温。クーリングは逆効果
ピーク期体温がセットポイントに到達し安定熱感・倦怠感・「暑い」安楽の確保。クーリング・解熱剤を検討
下降期セットポイントが下がり、体が放熱発汗・「楽になってきた」発汗への対応、脱水予防
発熱の3フェーズ(上昇期・ピーク期・下降期)と体の反応
発熱の3フェーズ。患者さんの訴えがフェーズ判断の手がかりになる。
現場のコツ:患者さんの訴えがフェーズ判断の手がかりになります。「寒い」なら上昇期、「暑い」「だるい」ならピーク期、「汗が出てきた」なら下降期。患者さんの自覚症状を聴くことが最も実践的なフェーズ判断です。

発熱とうつ熱(高体温)は違う——対応が真逆になる

発熱(fever)うつ熱・高体温(hyperthermia)
メカニズムセットポイントの上昇熱の放散が追いつかない
原因感染・炎症・薬剤など環境温度・脱水・衣類過多・体温調節機能低下
悪寒あり(上昇期)。ただし発熱でも悪寒がない場合はある通常なし
解熱剤効果あり(セットポイントを下げる)効果なし(セットポイントは正常)
クーリングフェーズによる積極的に実施(体表面からの放熱を促す)

この鑑別は対応が真逆になるため、最初に確認すべきポイントです。特に高齢者では、厚着や室温が高いことによるうつ熱を感染と誤認するケースがあります。

2. まず何を見る?——発熱時のアセスメント

「何度か」だけでなく「なぜ熱が出ているか」を考える

発熱時のアセスメントで大切なのは、体温の数値だけでなく、発熱の原因と全身状態を合わせて評価することです。

  • 発症のタイミング:いつから?急に?徐々に?
  • 随伴症状:悪寒、頭痛、咳嗽、排尿時痛、創部の発赤・熱感など
  • 背景情報:術後何日目か、カテーテル留置の有無、直近の抗菌薬使用歴
  • 環境要因:室温、寝衣の厚さ、脱水の有無(うつ熱の除外)

感染性 vs 非感染性の鑑別

原因特徴確認ポイント
感染症悪寒・CRP上昇・白血球増多がみられることがある(高齢者や免疫不全では典型的に出ないことも)感染源の検索(尿路・呼吸器・創部・カテーテル)
術後吸収熱術後24〜48時間に多い、一過性。ただし感染を除外する根拠にはならない手術侵襲の程度、48時間以降も持続するか、他の感染徴候の有無
薬剤熱新規薬剤開始後、比較的元気薬剤変更歴、好酸球増多の有無
脱水口腔乾燥、尿量減少、皮膚ツルゴール低下水分出納バランス、飲水量
うつ熱悪寒なし、環境要因あり室温・寝衣・布団の確認

バイタルサイン全体を見る——発熱+αの組み合わせが重要

体温だけを見て判断するのは危険です。発熱+他のバイタルサインの変化の組み合わせで緊急度が変わります。

  • 発熱+頻脈+血圧低下 → 敗血症の可能性。すぐに報告
  • 発熱+SpO2低下+呼吸数増加 → 呼吸器感染の悪化。すぐに報告
  • 発熱+バイタル安定+全身状態良好 → 経過観察しながら原因検索

NEWS(早期警告スコア)を併用すると、「なんとなく悪そう」を定量的に評価できます。

高齢者の発熱:熱が出にくい人がいることを忘れない

高齢者は体温調節機能が低下しているため、重篤な感染があっても高熱にならないことがあります。37度台前半でも、普段の平熱が35度台の患者さんにとっては「発熱」です。個人の平熱を把握しておくことが、高齢者の発熱アセスメントの前提になります。

3. クーリング——する?しない?根拠で整理する

「とりあえずクーリング」に根拠はあるか

結論から言うと、解熱を主目的としたクーリングの有効性は、現時点では十分に実証されていません(日本看護研究学会, 2011)。これは「効果がない」と証明されたのではなく、「効果を支持する質の高い研究が少ない」という意味です。

一方で、安楽目的でのクーリングには価値があります。患者さんが「冷やすと楽」と感じるなら、それ自体が看護介入として意味を持ちます。

看護師を対象とした調査では、86.5%が「解熱目的」でクーリングを実施していましたが、同時に「科学的根拠を求める」声が最も多かったと報告されています。大切なのは、「何のためにクーリングするのか」を意識することです。

フェーズで考える:上昇期にクーリングしても意味がない理由

セットポイント理論に基づくと、上昇期は体がセットポイントに向かって熱を産生・保持しようとしている最中です。この段階で体表面を冷やしても、体はさらに熱を産生しようとするだけで、患者さんの不快感が増すだけです。

  • 上昇期(悪寒・シバリング)→ クーリング×。保温を優先
  • ピーク期(熱感・「暑い」)→ 安楽目的でのクーリングは検討可
  • 下降期(発汗)→ クーリングの必要性は低い。発汗への対応を

クーリングが有効な場面

クーリングが有効なのは、セットポイントが正常なのに体温が上がっている場合、すなわちうつ熱・高体温です。

  • うつ熱・熱中症:積極的に体表面を冷却する
  • 安楽目的:ピーク期に「冷やすと楽」と患者さんが感じるなら、前額や腋窩に冷罨法を実施。解熱効果ではなく、苦痛の軽減が目的

クーリングの方法と部位

  • 部位:前額(気持ちよさ)、腋窩・鼠径部(太い血管の走行部位。下図参照)
  • 方法:氷枕、アイスノン、冷却シートなど
  • 注意:直接皮膚に当てず、タオルで包む。長時間の同一部位への冷却は凍傷のリスク
  • 確認:患者さんが「冷やしてほしい」と感じているか。嫌がっている場合は中止
クーリング部位の図解(前額・腋窩・鼠径部)
クーリングの主な部位。前額(安楽目的)、腋窩・鼠径部(太い血管の走行部位)。

4. 解熱剤——使うタイミングの考え方

「何度になったら使う」という一律の基準はない

「38.5度で解熱剤」のような基準は、一律に全患者へ適用できるものではありません。解熱剤を使うかどうかの判断は、体温の数値だけでなく、患者さんの苦痛と全身状態を総合的に見て判断します。

解熱剤の目的は「苦痛を和らげる」

発熱は防御反応の一面がありますが、だからといって「下げないほうがいい」とは限りません。発熱が続くことで体力を消耗し、全身状態が悪化するケースもあります。解熱剤(アセトアミノフェン・NSAIDsなど)はセットポイントを下げることで体温を低下させますが、主な目的は発熱に伴う苦痛(頭痛・倦怠感・関節痛など)を軽減し、患者さんの負担を減らすことです。

解熱剤使用を検討する場面:

  • 発熱による苦痛が強い(頭痛、全身倦怠感、不眠)
  • 心疾患・呼吸疾患があり、発熱による酸素消費量の増大が負担になる
  • 高齢者や免疫不全患者で、発熱の持続が全身状態の悪化につながりやすい
  • 脱水リスクが高く、発熱が続くと全身状態が悪化する可能性がある

医師への確認・報告のポイント

解熱剤の使用は医師の指示に基づきます。頓用指示がある場合でも、「使っていい場面かどうか」は看護師のアセスメントが重要です。

  • 体温の推移(いつから、どのくらい上がったか)
  • 随伴症状(悪寒、頭痛、倦怠感の程度)
  • 考えられる原因(感染源の有無、術後の経過)
  • 「解熱剤を使用してよいか」だけでなく、「この発熱をどう考えるか」を共有する姿勢

5. 報告——いつ・何を・どう伝えるか

「37.5度で報告」の根拠はあるのか

多くの病棟で「37.5度以上で報告」というルールが使われていますが、この数値に普遍的な科学的根拠はありません。大切なのは体温の絶対値ではなく、「この患者さんにとって、この体温は異常なのか」という判断です。一つの目安として、個人の平熱から1度以上の上昇があれば発熱として対応を検討します。そのためには、入院時に平熱を確認・記録しておくことが前提になります。

報告例:同じ38度でも伝え方で変わる

報告例①:情報が薄い

「○○さん、38度あります。どうしますか?」

報告例②:文脈が伝わる

「○○さん、術後3日目です。今朝から38度の発熱があり、昨日までは36度台でした。創部に発赤と熱感が出てきています。悪寒はありませんが、倦怠感の訴えがあります。感染の可能性を考えていますが、診察をお願いできますか?」

同じ38度でも、②のほうが医師は次の判断がしやすい。「体温だけでなく、何が起きていて、何を考えているか」を伝えるのが報告のポイントです。ISBARCなどのフレームワークを使うと整理しやすくなります。

6. チームで揃えたい判断基準

なぜバラつくのか——「基礎的すぎて教育が薄い」問題

1

基礎的すぎて、現場で改めて教育されない

学校で習った知識+先輩のやり方+自分の経験がミックスされ、人によって微妙に違う判断基準ができあがる

2

一般病棟看護に特化した統一ガイドラインが乏しい

ICUの新規発熱評価にはSCCM/IDSAのガイドラインがあるが、一般病棟の日常的な発熱対応を統一する基準は整備されていない。だから施設ごと・個人ごとに判断が分かれる

3

「できている前提」のバイアス

毎日やることだから全員できていると思い込んでいるが、根拠を説明できる人は少ない

病棟で共有できる判断フロー(案)

以下は一つのたたき台です。病棟の状況に合わせてカスタマイズし、チームで話し合って決めてください。

発熱時の判断フロー(STEP 1〜4)
発熱時の判断フロー。うつ熱の除外→フェーズ判断→原因推定→対応決定の4ステップ。
STEP 1

うつ熱の除外

環境要因(室温・寝衣・脱水)を確認。環境要因があり、悪寒がなく、解熱剤が効かない場合はうつ熱を疑い、まず環境調整。ただし悪寒がないだけでうつ熱と断定しない

STEP 2

フェーズの判断

患者の訴え・悪寒の有無・体温の推移から、上昇期・ピーク期・下降期を判断

STEP 3

原因の推定

感染性か非感染性か。感染源の検索(尿路・呼吸器・創部・カテーテル)

STEP 4

対応の決定

フェーズと原因に応じて、保温/クーリング/解熱剤/報告を判断

カンファレンスで話し合うべき3つの問い

1

「何度で報告する」をどう決めるか?

一律の数値ではなく、患者の平熱・疾患・状況を踏まえた基準を共有できているか

2

クーリングはどんなときにするか?

「とりあえず」ではなく、フェーズと目的(安楽 or 体温低下)を意識した基準を持てているか

3

解熱剤の頓用指示をどう判断しているか?

「38.5度超えたから使う」ではなく、苦痛と全身状態を見て判断できているか

この3つをチームで話し合うだけで、対応のバラつきはかなり減ります。

7. よくある疑問 Q&A

Q. 悪寒・シバリングがあるときはどうする?

A. 悪寒・シバリングは上昇期のサインです。体がセットポイントに向かって熱を産生しようとしているので、保温を優先します。毛布を追加し、可能であれば温かい飲み物を提供します(絶飲食・嚥下障害・水分制限がある場合は除く)。この段階でクーリングをすると、シバリングが悪化して患者さんの苦痛が増します。

Q. 術後何日目の発熱から感染を疑う?

A. 術後24〜48時間以内の発熱は非感染性(吸収熱)のことが多いですが、「早期だから感染ではない」と断定する根拠にはなりません。48時間以降も続く発熱や、一度解熱した後に再び上昇する発熱は感染の可能性が高まりますが、早期であっても創部の状態や他の感染徴候と合わせて総合的に判断してください。

Q. 解熱剤で熱が下がらないときは?

A. まず確認すべきは、うつ熱ではないかということです。うつ熱の場合、解熱剤はセットポイントに作用するため効果がありません。環境要因を確認してください。感染性の発熱で解熱剤が効かない場合は、感染源のコントロールが不十分な可能性があり、医師への報告が必要です。

Q. 高齢者で平熱が低い人の「発熱」はどう判断する?

A. 平熱が35度台の高齢者にとって、37度台前半でも「発熱」です。個人の平熱から1度以上の上昇があれば、発熱として対応を検討するのが一般的です。入院時に平熱を確認・記録しておくことが前提になります。

まとめ

✅ 発熱はセットポイントの上昇。体が意図的に起こしている防御反応

✅ 3つのフェーズ(上昇期・ピーク期・下降期)で対応が変わる。患者の訴えがフェーズ判断の手がかり

✅ 解熱目的のクーリングは有効性が十分に実証されていない。上昇期のクーリングは逆効果。安楽目的での使用には価値がある

✅ 解熱剤の目的は苦痛の軽減。体温の数値だけでなく、全身状態で判断する

✅ 報告は体温だけでなく文脈を伝える。「何が起きていて、何を考えているか」をセットで

✅ 判断がバラつくのは個人の問題ではなくチームの仕組みの問題。カンファレンスで3つの問いを話し合おう

発熱時の対応は基礎的だからこそ、「なんとなく」で終わらせず、根拠を持ってチームで揃えることが、患者さんへのケアの安定につながります。

参考・根拠

  • 日本看護研究学会雑誌 Vol.34 No.2(2011):発熱時のクーリングに関するエビデンスレビュー
  • O'Grady NP, et al. (2008). Practice guidelines for evaluation of new fever in critically ill adult patients. Critical Care Medicine, 36(4), 1330-1349.
  • Prescott HC, et al. (2023). SCCM/IDSA Guidelines for Evaluation of New Fever in Adult ICU Patients. Critical Care Medicine.
  • 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」
  • Kaplan LJ & Frangos S. (2014). Clinical review: Fever in the intensive care unit. Surgical Clinics of North America.
  • エキスパートナース「対応すべき発熱か、そうでない発熱か」(2022年1号)
  • Mackowiak PA. (1998). Concepts of fever. Archives of Internal Medicine, 158(17), 1870-1881.

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。