手技・処置

導尿の手順と現場のコツ|男女別に根拠から解説

2026-04-02

「尿道口がどこか分からない」「カテーテルが途中で止まってしまう」——導尿は、学校で習った手順通りにいかないことが現場では珍しくありません。特に高齢女性や前立腺肥大のある男性では、経験のある看護師でも難渋することがあります。

この記事では、そうした現場の"実際の難しさ"に正直に向き合いながら、男女別の手順と根拠、よくある困りごとへの対処法を解説します。教科書の整理だけでなく、現場で使える知識を目指しました。

1. 導尿とは?目的と適応を整理しよう

導尿とは、尿道口からカテーテル(細い管)を挿入し、膀胱内の尿を人工的に排出させる処置です。自力での排尿が困難な状況で行われます。

処置に際しては、無菌操作による感染予防と、患者さんの羞恥心や苦痛への配慮の両立が求められます。

膀胱留置カテーテルを挿入した状態の断面図
図:カテーテルが尿道を通って膀胱内に挿入されている状態(女性の矢状断面)。

導尿の主な目的・適応

目的具体例
尿閉の解除前立腺肥大症、術後の排尿困難
残尿測定神経因性膀胱の評価
尿量管理術中・ICUでの厳密な水分管理
薬剤注入膀胱内への薬液注入
採尿清潔尿の採取(培養検査など)

2. 導尿の種類と使い分け

間欠的導尿(ネラトン)

必要なときだけカテーテルを挿入し、排尿後にすぐ抜去する方法。「一時導尿」とも呼ばれます。尿路感染のリスクが持続的導尿より低い反面、処置ごとに清潔操作が必要です。

持続的導尿(膀胱留置カテーテル)

バルーン付きカテーテルを膀胱内に固定し、持続的に尿を排出させる方法。術後や集中管理が必要な患者さんに用いますが、留置期間が長くなるほど尿路感染(CAUTI)のリスクが高まります。

使い分けの基本:短期間・一時的な目的なら間欠的導尿、持続的な管理が必要なら留置カテーテルが選ばれます。不必要な留置を避けることが感染予防の基本です(CDC CAUTIガイドライン)。

3. カテーテルの種類とサイズの選び方

ネラトンカテーテルフォーリーカテーテル
用途間欠的導尿持続的留置
構造単純な管バルーン付き
素材シリコン・ラテックス等シリコン・ラテックス等

素材の選択ポイント

素材特徴
ラテックス製安価で一般的。ラテックスアレルギーのある患者には使用不可
シリコン製生体適合性が高く長期留置向き。アレルギーの心配がない
シリコンコーティングラテックス製中間的な特性。ラテックスアレルギーには注意が必要

臨床上の重要ポイント:処置前にラテックスアレルギーの既往を必ず確認する。アレルギーがある場合はシリコン製を選択。

Fr(フレンチ)サイズの目安

サイズ選択の基本原則(CDC CAUTI Guidelines / EAU Urological Infectionsガイドライン):「排液が確保できる最小サイズのカテーテルを選択する」。太すぎると尿道括約筋の圧迫・バイパス現象・尿道粘膜損傷・CAUTIリスク増大につながります。

対象間欠的導尿留置カテーテル
成人女性12〜14Fr14Fr(最小限)
成人男性14〜16Fr14〜16Fr
前立腺肥大がある男性医師指示を優先医師指示を優先

留置カテーテルは細すぎてもNG:バルーン固定があるため、細すぎると膀胱頸部への刺激が強まります。最小でも14Fr程度が目安です。

前立腺肥大がある場合のポイント

  • 太いカテーテルが必ずしも通りやすいわけではない。BPHで前立腺部尿道が狭窄している場合、太いカテーテルはむしろ通過しにくいことがある
  • 無理な操作は尿道損傷リスクがあるため、難渋する場合は医師へ相談
  • Tiemann型カテーテル(先端が湾曲した特殊タイプ)が選択されることもある

4. 【女性】導尿の手順とコツ

女性外陰部の解剖図(クリトリス・尿道口・膣口・肛門の位置)
女性外陰部の解剖図。上から「クリトリス→尿道口→膣口→肛門」の順番を覚えておくと同定しやすい。

ステップごとの手順(根拠付き)

① 説明と同意

「これからカテーテルを使ってお小水を出しますね。少し違和感があるかもしれませんが、できるだけ楽にできるようにしますね」と処置内容を伝えます。

根拠:事前説明により患者さんの不安が軽減し、処置中の緊張が和らぐことで挿入がスムーズになります。

② 体位の調整

仰臥位で膝を立て、両膝を外側に開いてもらいます(砕石位または開脚仰臥位)。

根拠:外陰部の視野を確保し、尿道口の同定を容易にするため。

③ 照明・視野の確保

照明を陰部に直接当てて「外陰部全体がしっかり見える」状態を作ります。

根拠:暗いと尿道口の同定が難しくなり、ミスの原因になります。視野の確保が最重要です。

④ 清潔野の確保・消毒

清潔手袋を装着し、処置シーツを敷いて清潔野を確保します(ドレープは施設のプロトコルに従う。留置時は特に推奨)。陰唇を広げ、尿道口を中心に内から外へ(尿道口→外側・肛門側の方向)消毒します(1ストローク1ガーゼの原則)。

根拠:「清潔な部位(尿道口)→不潔な部位(外側・肛門側)」の方向で拭くことで、細菌の尿道口への持ち込みを防ぎます。外から内へ(肛門側→尿道口方向)は細菌を持ち込むリスクがあるためNG。

⑤ カテーテルの挿入

潤滑ゼリーをカテーテル先端に塗布し、尿道口に向けてゆっくり4〜6cm挿入します。尿の流出を確認したらさらに1〜2cm進め、目盛り付きの尿器で尿を受けます(尿量を直接測定できます)。

根拠:先端に潤滑ゼリーを使用することで摩擦が減り、患者さんの苦痛と粘膜損傷リスクを軽減できます。

消毒剤の選択

消毒剤特徴注意点
ポビドンヨード(イソジン)広域抗菌・最も一般的ヨードアレルギー・甲状腺疾患のある患者には使用不可
クロルヘキシジン(ヒビテン等)持続効果あり粘膜使用は低濃度(0.05〜0.1%)に限る。高濃度の粘膜使用はアナフィラキシー報告あり。施設での使用可否を確認
滅菌生理食塩水刺激なし・アレルギーなしCDCガイドラインでは消毒剤と感染率に有意差なしとするエビデンスあり

処置前に必ず確認:ヨード・ラテックスアレルギーの既往。施設のプロトコルに従って消毒剤を選択する。CDCは消毒剤の種類よりも清潔操作の徹底を優先すべきとしています。

尿道口が見つからないときの対処法

よくある間違い:膣口にカテーテルを挿入してしまう

新人が最も困るのがこの状況です。まず解剖の位置関係を頭に入れることが大切です。

女性外陰部の解剖図(赤矢印:尿道口、青矢印:膣口)
赤矢印が尿道口、青矢印が膣口。位置関係を視覚的に覚えておこう。
  • 解剖を覚える:上から「クリトリス→尿道口→膣口→肛門」の順。尿道口はクリトリスのすぐ下、膣口のすぐ上
  • 照明をしっかり当てる:暗い状態では同定できません
  • 陰唇をしっかり広げる:左手で固定してから右手で操作する
  • もし膣口に入れてしまったら:新しいカテーテルに交換。使用済みカテーテルはそのまま膣口に置いておくと目印になります(施設プロトコルに従う)

高齢女性では尿道口の同定がさらに難しい

高齢女性(特に閉経後)では、エストロゲン低下により外陰部・膣粘膜が萎縮します。粘膜が薄く・淡くなることで膣口と尿道口の色や形の差が乏しくなり、経験者でも同定に迷うことがあります。

知っておきたい:尿道肉阜(にょうどうにくげ)

閉経後女性に比較的多く見られる、尿道口後縁の小さな赤色隆起。これ自体が「穴」のように見えて膣口と混同されることがあります。

それでもはっきり判別できない場合の対応:

  1. 膣口に目印カテーテルを留置する(最も実践的):意図せず膣口にカテーテルが入ってしまった場合、そのカテーテルをいったんそのままにしておく。「ここは膣口」と視覚的に確定させることで、その上方(腹側)にある尿道口を新しいカテーテルで探しやすくなります。尿道口への挿入が完了したら膣口のカテーテルは抜去します。
  2. 患者さんに軽くいきんでもらう:ごく軽くいきんでもらうと、尿道口がわずかに開いて見えやすくなることがあります。尿が少し漏れて場所が特定できることもあります。
  3. 粘膜を湿らせる:乾燥した萎縮粘膜を生理食塩水や潤滑剤で湿らせると、わずかにコントラストが戻り尿道口が見えやすくなることがあります。
  4. 照明・体位を見直す:手技を一度止めて、照明の角度と患者さんの体位を調整し直します。ペンライトを斜めから当てると陰影が生じ、構造が見えやすくなる場合があります。
  5. 無理をせず応援を呼ぶ:上記を試みても判別できない場合は、一人で無理をしないことが原則。経験ある先輩看護師や医師に交代・応援を依頼しましょう。

5. 【男性】導尿の手順とコツ

ステップごとの手順(根拠付き)

① 陰茎の保持・消毒

包皮を引いて亀頭を露出し、尿道口から外側に向かって円を描くように消毒します。

根拠:清潔操作の原則:汚染部位(外側)から清潔部位(内側=尿道口)に向かう方向はNG。中心から外へ向かって拭きます。

② キシロカインゼリーの尿道内注入

専用の尿道注入用シリンジを使ってキシロカインゼリー(2%リドカインゼリー)を尿道口から5〜10mL注入します。注入後は尿道口を軽く圧迫し、1〜3分待機してからカテーテルを挿入します。施設のプロトコルに従って実施してください。

根拠:リドカインの局所麻酔効果で外尿道括約筋がリラックスし、挿入時の苦痛が軽減されます。Cochrane reviewを含む複数の研究で疼痛軽減効果が示されており、EAUガイドラインでも推奨されています。カテーテル先端に塗るだけでなく尿道内に注入することで全長の潤滑が得られます。

③ カテーテルの挿入

陰茎を腹壁に対して垂直(90度)に保持し、カテーテルをゆっくり挿入します。成人男性の尿道の長さは約18〜20cmです。

根拠:陰茎を垂直に保つことで、陰茎部尿道の屈曲が伸展し、挿入がスムーズになります。

抵抗を感じたときの対処法

男性尿道の解剖図(前立腺部尿道・球部尿道の位置)
青くハイライトされた前立腺部尿道・球部尿道がカテーテル挿入時に抵抗を感じやすい部位。模式図のため簡略化しています。

男性の尿道には2つの「関門」があります:球部尿道(陰茎根部のカーブ部分)と前立腺部尿道(前立腺肥大があると特に狭窄しやすい)。

  • いったん止まる:無理に押し込まず、患者さんに「深呼吸して、お腹の力を抜いてみてください」と声をかける
  • 陰茎の角度を調整する:抵抗を感じたら陰茎を垂直(90度)から約45度程度に下げる(腹部方向へ)。後部尿道(前立腺部)は恥骨の後方へ向かって曲がっているため、角度を変えることでカテーテルが自然なカーブに沿いやすくなります
  • 呼気に合わせてゆっくり進める:括約筋が弛緩する呼気のタイミングでそっと進める

⚠️ 無理な挿入は厳禁

上記を試みても進まない場合は中止し、主治医・上位者に報告してください。無理な挿入は尿道損傷・出血の原因になります。

6. 新人がよく迷うポイントQ&A

Q. 挿入してもすぐ尿が出ない。どうする?

A. まずカテーテルの先端が膀胱内に到達しているか確認します。女性は4〜6cm挿入後に出なければさらに1〜2cm進める、男性は18〜20cm程度が目安です。それでも出ない場合はカテーテルが折れ曲がっていないか確認し、患者さんにリラックスしてもらいましょう。

Q. 患者さんが痛がる。無理に進めていい?

A. 違和感・張り感は正常な感覚なので声をかけながらゆっくり進めてOKです。しかし強い痛み・鋭い痛みは尿道損傷のサインの可能性があるので中止して状況を確認してください。男性で「どうしても進まない+強い痛み」の場合は無理せず中止し、前立腺肥大や尿道狭窄の可能性として報告します。

Q. 清潔操作の範囲はどこまで?

A. 「カテーテルが触れる部分はすべて清潔」が原則。カテーテル本体(特に膀胱内に入る部分)・カテーテルを持つ手(清潔手袋)・消毒した外陰部・尿道口周囲が対象です。一度でも不潔になったと判断したら、そのカテーテルは使用しません。

7. 合併症と観察ポイント

尿路感染(UTI)のリスクと予防

導尿に関連する最も多い合併症が尿路感染(UTI)です。カテーテルに沿って細菌が膀胱内に侵入することで起こります。

  • 厳密な清潔(無菌)操作の徹底
  • 不必要な留置期間の短縮
  • 陰部の清潔保持

処置後に観察すべき項目

観察項目確認のポイント
尿量測定値を記録(1回の導尿で500mL以上は注意)
尿の性状色・混濁・血尿の有無
感染徴候発熱・尿道口の発赤・分泌物
患者の訴え疼痛・違和感の持続
バイタルサイン処置後の変化(特に大量排尿後の血圧低下)

8. 患者さんへの声掛けと配慮

導尿は陰部を露出する処置のため、患者さんにとって精神的な負担が大きい処置です。露出は処置に必要な最小限にとどめ、「恥ずかしいですよね。できるだけ短時間で終わらせます」と一言添えるだけで気持ちが楽になります。

タイミング声掛けの例
挿入前「力を抜いてください。息をゆっくり吐いてみましょう」
挿入中「今カテーテルが入っています。少し違和感があるかもしれません」
尿が出たとき「尿が出てきましたよ。もう少しで終わりますね」
終了後「終わりました。不快感はありますか?」

声掛けには2つの役割があります。患者さんを安心させることと、緊張をほぐして尿道括約筋をリラックスさせること。技術的な意味でも重要です。

まとめ

導尿は「やってみれば意外と難しい」処置の一つです。特に女性の尿道口の同定と、男性の前立腺部での対応は、現場で最もつまずきやすいポイントです。

1.解剖を理解する:頭の中に地図があれば迷わない
2.視野と体位を整える:見えなければ始まらない
3.清潔操作を守る:感染は患者さんを傷つける
4.患者さんと対話する:声掛けは技術の一部

参考文献・根拠

  • ・日本看護協会「看護技術の根拠と実際」
  • ・CDC: Guidelines for Prevention of Catheter-Associated Urinary Tract Infections (CAUTI)
  • ・厚生労働省:医療関連感染対策(尿路感染予防)

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。