スケール・評価

DESIGN-R(デザインアール)完全ガイド|7項目の見方とケアにつなげるポイント

2026-03-31

この記事でわかること

  • ✓DESIGN-Rの7項目の意味と評価のポイント
  • ✓2020年改定で押さえておくべき点(DTI・臨界的定着疑い)
  • ✓スコアをケアにつなげる考え方
  • ✓現場でずれやすい評価ポイントとQ&A

「DESIGN-Rって、診療報酬の記録のためだけじゃないの?」

実は、このスコアをちゃんと読むだけで、次に何を見直すべきかを考える手がかりになります。記録ツールで終わらせない、現場で役立てるDESIGN-Rの使い方を解説します。

1. DESIGN-Rとは?基本をサクッとおさらい

DESIGN-R(デザインアール)は、日本褥瘡学会が開発した褥瘡の状態評価スケールです。2002年に初版が公開され、2008年に「R(Rating=重み付けスコア)」が加わり、各項目に点数がつくようになりました。項目ごとに配点の幅が異なり(例:滲出液は最大6点、ポケットは最大24点)、臨床的な重要度が反映されています。2020年にさらに改定され、深部損傷褥瘡疑い(DDTI)や臨界的定着疑い(I3C)などの評価区分が追加されました。

名前の意味と7つの頭文字

頭文字評価するもの評価
D創の深さd0・d1・d2・D3・D4・D5・DDTI・DU
E滲出液0・1・3・6
S創の大きさ0〜15
I炎症・感染0・1・3・3C・9
G肉芽組織0〜6
N壊死組織0・3・6
Pポケット0・6・9・12・24
DESIGN-Rの7項目を図解した一覧
DESIGN-Rの7項目。各アルファベットが評価項目の頭文字になっている。

各項目は段階的に評価する

各項目は、状態に応じて段階的に評価します。記録を見慣れると、どの項目が相対的に問題になっているか把握しやすくなります。

例えば「D3-E3-S8-I1-G4-N6-P0」のような記録(簡略例)があれば、各項目をざっと見るだけで「今どの状態が一番問題か」が伝わります。合計スコアは0〜66点で重症度の目安になりますが、実際の経過判断では各項目の内訳を見ることが重要です。

※合計スコアは、深さ(D)を除く6項目で算出します。

2. 7項目の評価ポイントを現場目線で解説

特にばらつきやすい項目: D(深さ)・I(炎症/感染)・P(ポケット) ——この3項目は判断に迷いやすく、スタッフ間でスコアがずれやすい傾向があります。

D(Depth:深さ)——見えない深さをどう判断するか

深さの評価はd0〜D5の6段階に加え、DDTI(DTI疑い)とDU(壊死組織で覆われ深さの判定が不能)の2つの特殊表記があります。DDTIは深部に損傷が疑われる状態で、詳しくは後述します。「D3(皮下組織まで)」と「D4(皮下組織を越える)」の境界に迷うことが多いです。深さの評価は視診だけで判断が難しいことがあります。必要時は施設手順に沿って愛護的に確認し、判断に迷う場合はWOCNや医師に相談します。

DUとは:壊死組織が創全体を覆っていて、その下の深さが視診で判定できない状態。デブリードマン後に再評価が必要です。DDTIとは別の概念なので混同しないよう注意します。
記録のコツ:深さが不明確なときは「D評価困難(閉鎖創のため)」と注記しておくと次の担当者が混乱しません。

E(Exudate:滲出液)——滲出液管理の方向性を考える手がかり

Eスコアは、ドレッシング材やガーゼに付着した滲出液の量で評価します。性状(漿液性・血性・膿性)や臭いはDESIGN-RのEスコアの定義には含まれませんが、感染評価の補助情報として別途記録しておくと有用です。

滲出液量の変化は、感染や局所環境を含めた創面の状態変化を見直す手がかりになります。

Eの値は、滲出液管理の方向性を考える手がかりになります。

具体的なドレッシング材の選択は、創部の状態や施設の採用品、医師・WOCNの方針を踏まえて判断します。

S(Size:大きさ)——正確に測るための実践テクニック

長径×短径(cm²)で評価します。不整形の創では測定値がばらつきがちです。

  • 毎回同じ体位・同じ時間帯に測定する(体位で創の形が変わる)
  • 写真撮影とセットで記録するとスタッフ間の認識が揃いやすい
  • ポケットがある場合、Sはポケットを含めず創口の大きさで評価する(ポケット分はPで別途評価)

I(Inflammation/Infection:炎症・感染)——「臨界的定着疑い(3C)」とは

2020年改定で追加された「3C(臨界的定着疑い)」が特に重要です。

臨界的定着(クリティカルコロナイゼーション)の目安

  • 明らかな感染徴候(熱感・疼痛・膿)はない
  • でも治癒が止まっている
  • 滲出液が多いまま改善しない

3Cが疑われる場合は、創の停滞要因を再評価し、局所管理の見直しや治療方針について医師・WOCNと相談します。

感染・臨界的定着・定着の違いを示す概念図
細菌の状態は「定着→臨界的定着→感染」と連続して変化する。臨界的定着は見た目上は感染と区別しにくいが治癒が停滞する。

G(Granulation:肉芽組織)——良い肉芽・悪い肉芽の見分け方

状態見た目評価
創閉鎖・肉芽不要創が閉鎖している状態G0
良性肉芽あり鮮紅色・湿潤・ぷりぷりG1〜G3
良性肉芽が少ない暗赤色・浮腫状・崩れやすいG4〜G5
良性肉芽なし肉芽が全く形成されていないG6

Gスコアは、良性肉芽が創面に占める割合で評価します。G1〜G5はその割合によって段階的に決まり、見た目の色や質感はあくまで判断の補助です。なお、過剰肉芽(創縁より盛り上がる状態)は臨床上みられることがありますが、G6の公式定義ではなく、別途所見として記録します。

不良肉芽は感染や栄養不足のサインである場合が多く、原因へのアプローチが必要です。

N(Necrotic tissue:壊死組織)——壊死組織があるときの考え方

Nスコアは色だけでなく、柔らかさ・付着性で評価します。柔らかい壊死組織はN3、硬く厚く創面に密着した壊死組織はN6です。壊死の性状と範囲を記録し、処置方針について医師やWOCNと共有します。

P(Pocket:ポケット)——測定時の落とし穴

ポケットとは創口より創内部が広がっている状態です。特に大転子部・仙骨部はポケットができやすく、見落とすと内部で感染が進行するリスクがあります。ポケットの評価は視診だけで判断が難しいことがあります。必要時は施設手順に沿って愛護的に確認し、判断に迷う場合はWOCNや医師に相談します。

3. 2020年改定で何が変わった?

深部損傷褥瘡(DTI)疑い——見た目だけで判断してはいけない理由

DTI(Deep Tissue Injury)とは、骨に近い深部の組織(筋肉・脂肪)が圧迫やずれによって損傷している状態のことです。DTI疑いは、皮膚表面は比較的保たれているが、深部でこの損傷が起きている可能性がある病態を指します。皮膚表面が比較的保たれている場合もありますが、発赤・紫斑・浮腫・水疱・びらん・浅い潰瘍を伴う場合も含まれ、表面の状態だけでは判断できません。

見た目の特徴

  • 紫〜暗赤色の変色
  • 触れると硬い、または水疱
  • 周囲の皮膚と比べて温感の差がある

DTI疑いの場合はD評価を「DDTI」と記載します。急速に悪化することがあるため、圧迫解除とポジショニングの徹底が最優先です。

臨界的定着疑い(3C)——感染との違いを押さえる

「見た目は感染ほど強くないのに、なぜか治癒が進まない状態」と捉えると理解しやすいです。

「なぜか治らない創」に出会ったとき、3Cを疑う視点が重要です。感染(I3以上)との違いを整理します。

比較ポイント感染(I3以上)臨界的定着疑い(3C)
炎症徴候あり(熱感・腫脹・疼痛・膿)なし or 軽微
滲出液膿性・増加多いが膿性でないことも
治癒状況停滞・悪化停滞(改善しない)
主なアクション医師に報告、感染対応局所管理の見直し・医師・WOCNに相談

4. 経過評価の読み方——改善?悪化?

合計スコアだけで判断しない

同じ合計20点でも意味が違う

内訳の例(合計20点)注目項目読み取れること
D3-E3-S6-I1-G4-N3-P0N3(壊死あり)・G4(肉芽不良)壊死・肉芽が主因。改善すれば好転の可能性
D2-E3-S12-I3-G0-N0-P0S12(拡大)・I3(感染疑い)サイズ拡大+感染。悪化・進行を示すサイン

毎回、各項目を前回と比較する習慣が大切です。「先週と比べてNが改善、Sは横ばい」のように変化を言語化して残すと、申し送りがスムーズになります。

スコアが下がらないときに疑うこと

1

圧迫が続いている

ポジショニング・マットレス選択の見直し

2

栄養不足

食事摂取量・体重変化・筋肉量や浮腫の有無を確認。必要に応じて血液検査を含め総合的に評価

3

感染・臨界的定着

創のアセスメント再評価

4

ドレッシング材が合っていない

滲出液量・創の状態に合わせた見直し

5

基礎疾患のコントロール不良

糖尿病・末梢循環障害など

5. スコアをケアにつなげる

「スコアをつけて終わり」ではもったいない。スコアの組み合わせは、次に何を確認・見直すべきかを考える手がかりになります。

項目観察ポイント報告・ケア検討
D(深さ)創底の状態・周囲の硬結圧迫解除の徹底、外科的対応の要否を医師に報告
E(滲出液)量・性状・においの変化感染兆候の確認、ドレッシング管理の見直し
S(サイズ)前回比・形状の変化圧迫・感染・栄養を確認、治療方針を再検討
I(感染・3C)熱感・腫脹・膿・治癒停滞医師・WOCNに報告、局所管理の見直し
G(肉芽)色・湿潤感・盛り上がり栄養状態・感染の評価、専門職と方針確認
N(壊死)色・範囲・性状壊死の程度を記録・報告、処置方針を医師と検討
P(ポケット)ポケットの深さ・感染徴候洗浄方法の工夫、外科的処置の要否について医師と共有・相談する

チーム内で評価・治療方針を統一するには

「スタッフによってスコアが違う」「局所管理の方針がバラバラになる」は多くの現場で聞かれる悩みです。記録のばらつきは個人の問題ではなく、チームの仕組みの問題です。

  • 写真+スコアをセットで記録し、視覚的な基準を共有する
  • 定期的な褥瘡カンファレンスでスコアの付け方を確認し合う
  • DESIGN-Rの評価結果を踏まえた局所管理・報告フローを病棟内でルール化する(WOCNや薬剤師を巻き込む)

6. よくある間違いとQ&A

Q. D(深さ)はどのタイミングで評価する?

A. 基本は毎回の処置時。洗浄後・デブリードマン後など、創がもっとも観察しやすい状態で評価するのが原則です。

Q. 同じ創なのにスタッフによってスコアが違う——なぜ?

A. 最もばらつきやすいのは「D(深さ)」「G(肉芽の質)」「I(炎症vs感染)」。写真とスコアをセットで記録し、カンファレンスで定期的に擦り合わせましょう。

Q. ポケットがある場合、Sの測定はどうする?

A. Sはあくまで創口(表面に見える傷)の大きさで評価します。ポケット内部の広がりはPで別途評価してください。

Q. DESIGN-Rって診療報酬のためだけに記録してるの?

A. 診療報酬の要件になっているのは事実ですが、本来の目的は治癒経過の客観的な評価と多職種間の情報共有です。「なぜこのスコアになったか」「次に何をするか」を考える習慣が、DESIGN-Rを真に活かすカギです。

まとめ

✅ 7項目それぞれが、ケアの方向性を示すシグナル

✅ 経過を追うことで、治療が効いているか・問題が隠れていないかがわかる

✅ チームで共有することで、アセスメントのばらつきと治療方針の不統一を解消できる

「スコアをつけてなんとなく記録する」から「スコアを読んで次の一手を考える」へ。その一歩が、褥瘡の変化を見逃さず、より適切なケアにつなげる助けになります。

参考・根拠

  • 日本褥瘡学会「改定DESIGN-R®2020 Consensus Document」(2020年)
  • 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版」(2022年)
  • 厚生労働省「入院基本料における褥瘡対策の評価」関連通知

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。