スケール・評価

JCSとGCSの違いと使い分け|意識レベル評価の基本と報告のコツ

2026-04-10

この記事でわかること

  • ✓JCS(3-3-9度方式)とGCS(E・V・M)の評価方法
  • ✓同じ患者を両方で評価する具体例
  • ✓JCSとGCSの使い分け(どの場面でどちらを使うか)
  • ✓報告(SBAR)でスケールを使った伝え方

「意識が落ちてきています」——この報告、医師に伝わっていますか?

「落ちてきている」の中身が、開眼しなくなったのか、発語が減ったのか、痛み刺激への反応が変わったのか。スケールで伝えるだけで、報告の精度と伝わり方が変わります。

1. 意識レベルを「数字で伝える」ための2つのスケール

JCS(ジャパン・コーマ・スケール)とGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)は、意識レベル評価で最も広く使われているスケールです。この記事では、両者の違い・使い分け・報告での活かし方を解説します。

なぜ「意識が悪い」ではダメなのか

「傾眠です」「ぼんやりしています」「意識が落ちました」——現場ではこうした言葉で意識レベルを伝えることが多いかもしれません。しかし、これらの表現は人によって受け取り方が違います。

JCSとGCSは、意識の状態を共通の言葉(数字)で伝えるためのツールです。数字にすることで:

  • 誰が見ても同じ基準で評価できる
  • 前回と比較して、変化が明確になる
  • 医師への報告が具体的になり、対応判断が速くなる

JCSとGCS——日本と世界の共通言語

JCSGCS
正式名称Japan Coma ScaleGlasgow Coma Scale
開発日本(太田ら、1974年)英国(Teasdale & Jennett、1974年)
評価方法覚醒度を3段階×3レベル開眼・言語・運動の3項目を点数化
スコア0〜300(大きいほど重症)3〜15(小さいほど重症)
主な使用地域日本世界標準
JCSとGCSの概要比較図
左:JCS(覚醒度の3段階)/右:GCS(E・V・Mの3項目)

2. JCS(ジャパン・コーマ・スケール)——3-3-9度方式

大枠の3段階

JCSはまず覚醒の程度で大きく3つに分けます。「Ⅰは起きている、Ⅱは起こせる、Ⅲは起きない」——まずこの3つを押さえればOKです。なお、意識清明の場合は「JCS 0」と表記します。Ⅰ〜Ⅲは意識障害がある場合の分類です。

段階覚醒の状態桁
Ⅰ刺激しなくても覚醒している1桁
Ⅱ刺激すると覚醒するが、刺激をやめると眠り込む2桁
Ⅲ刺激しても覚醒しない3桁

各段階の詳細

Ⅰ:覚醒している(1桁)

JCS状態現場でのイメージ
Ⅰ-1意識清明だが今ひとつはっきりしない「いつもよりぼんやりしてるかな」
Ⅰ-2見当識障害がある日付や場所がわからない
Ⅰ-3自分の名前・生年月日が言えないかなりぼんやりしている

Ⅱ:刺激で覚醒する(2桁)

JCS状態現場でのイメージ
Ⅱ-10普通の呼びかけで開眼する名前を呼ぶと目を開ける
Ⅱ-20大きな声や体を揺さぶることで開眼する肩を叩いて「○○さん!」で開眼
Ⅱ-30痛み刺激+呼びかけの繰り返しでかろうじて開眼爪床圧迫+大声でようやく開眼

Ⅲ:覚醒しない(3桁)

JCS状態現場でのイメージ
Ⅲ-100痛み刺激に対し払いのける動作痛みに手で払いのける
Ⅲ-200少し手足を動かす・顔をしかめる痛みで顔をしかめる程度
Ⅲ-300痛み刺激に全く反応しない完全に無反応

付加情報(R・I・A)

JCSでは基本スコアに加えて以下の付加情報を記録できます。

  • R(Restlessness):不穏状態がある場合
  • I(Incontinence):失禁がある場合
  • A(Akinetic mutism / Apallic state):無動性無言・失外套症候群(開眼はしているが、自発的な発語や動作がなく、周囲への反応が乏しい状態)
例:「Ⅱ-20-R」=大きな声で開眼するが、不穏あり

3. GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)——E・V・Mの3項目

GCSは開眼(E)・言語(V)・運動(M)の3つの機能を個別に評価し、合計します。

E(Eye opening:開眼)

点数状態
E4自発的に開眼している
E3呼びかけにより開眼する
E2痛み刺激により開眼する
E1開眼しない

V(Verbal response:言語反応)

点数状態
V5見当識あり(日時・場所・人物がわかる)
V4会話は成立するが混乱している
V3言葉は出るが会話は成立しない(単語のみなど)
V2理解不明の声を出す(うめき声など)
V1発語なし

M(Motor response:運動反応)

点数状態
M6命令に従う(「手を握って」に応じる)
M5痛み刺激の部位を認識して払いのける
M4痛み刺激に対して四肢を引っ込める(逃避反応)
M3異常な屈曲反応(除皮質姿勢)
M2伸展反応(除脳姿勢)
M1まったく動かない

合計3〜15点の読み方

合計点重症度
15点正常(意識清明)
13〜14点軽症
9〜12点中等症
8点以下重症(気道確保を検討)
GCSの強み:E・V・Mを個別に記録するため、「どの機能が落ちているか」がわかります。合計点だけでなく「E2V3M4=9点」のように内訳で記録するのが原則です。

4. 同じ患者をJCSとGCSで評価してみる

例1:呼びかけに開眼するが、会話がかみ合わない患者

名前を呼ぶと目を開けるが、「今日は何月何日?」に答えられない。「手を握って」と言うと握ってくれる。

JCS

Ⅱ-10

GCS

E3 + V4 + M6 = 13点

例2:痛み刺激でのみ反応する患者

声をかけても反応なし。爪床を圧迫すると痛みで薄く開眼し、顔をしかめて手で払いのけようとする。発語なし。

JCS

Ⅲ-100

GCS

E2 + V1 + M5 = 8点

JCSとGCSのおおまかな対応関係

JCSGCS(目安)覚醒の状態
0(清明)15正常
Ⅰ-1〜313〜14覚醒しているが、はっきりしない
Ⅱ-10〜309〜12刺激で覚醒する
Ⅲ-100〜3003〜8覚醒しない

※あくまでざっくりとした比較であり、換算表ではありません。JCSは覚醒度、GCSは機能別評価と視点が異なるため、同じ患者でも対応関係が一致しないケースは多くあります。両方を個別に評価してください。

5. JCSとGCSの使い分け

JCS:素早く大まかに伝えたいとき

  • 急変時:「JCS Ⅲ-100です!」の一言で重症度が伝わる
  • 電話報告:短い言葉で状況を共有できる
  • 一般病棟:日常的な意識レベルチェックに使いやすい

GCS:詳細に経過を追いたいとき

  • ICU・脳外科:E・V・Mの変化を経時的に記録
  • 頭部外傷:GCS 8点以下では気道確保を含めた対応が検討される
  • 予後評価:研究・ガイドラインの基準値はGCSベースが多い

併用するケース

救急搬送時はJCSで素早く共有し、入院後はGCSで詳細に経過を追うのが一般的です。「JCS Ⅱ-20、GCS E2V4M5=11点」のように併記する施設もあります。

6. 報告で使える伝え方

「意識が悪い」をスケールで伝えるとどう変わるか

普段の観察で気づいていること——「発語が乏しい」「開眼しない」「声かけに反応しない」——これは実はGCSのE・V・Mそのものです。やっていることは同じで、伝え方を数字に置き換えるだけです。

自然言語の報告スケールで伝えた場合
「意識が落ちてきています」「JCSがⅠ-3からⅡ-20に変化しました」
「声をかけても反応が鈍い」「GCSのEが4→3、Vが5→3に低下しています」
「ぼんやりしています」「JCS Ⅰ-2、見当識障害があります」

JCSで報告する場合の例文

「○○さんの件でお電話しました。先ほどまでJCS Ⅰ-1でしたが、現在Ⅱ-20に低下しています。大きな声で呼ぶと開眼しますが、すぐに閉眼します。バイタルはBP 160/90、HR 88、SpO2 96%です。指示をいただけますか。」

GCSで報告する場合の例文

「○○さんの意識レベルが変化しました。1時間前はE4V5M6の15点でしたが、現在E3V4M6の13点に低下しています。開眼は呼びかけで可能ですが、日時の見当識が曖昧です。ご確認をお願いできますか。」

どちらの場合も、「前回からの変化」を伝えることがポイントです。

7. よくある疑問とQ&A

Q. 意識レベルはいつ・どのくらいの頻度で評価する?

A. 入院時・術後・急変時はもちろん、バイタルサイン測定のタイミングで一緒に確認するのが基本です。急性期は医師指示や施設基準に沿って、より高頻度に評価します。安定している患者さんではラウンドごとに確認し、前回との変化を記録しましょう。

Q. GCSのV(言語)は挿管患者にどう使う?

A. 挿管中は発語ができないため、V1T(Tはtubeの意味)と記録します。合計点は「E+1+M」として算出し、「GCS ○T点」と表記する施設が多いです。ただし表記ルールは施設により異なるため、自施設の記録基準に従ってください。

Q. 新人はどちらを先に覚えればいい?

A. まずJCSを覚えましょう。3段階の大枠(Ⅰ:起きている、Ⅱ:起こせる、Ⅲ:起きない)だけで素早い報告ができます。GCSはICUや脳外科で必要になったタイミングで覚えれば大丈夫です。

Q. JCSとGCSの換算はできる?

A. おおまかな対応関係はありますが、厳密な換算はできません。JCSは覚醒度、GCSは機能別の評価なので視点が異なります。両方を併記するのが最も正確です。

まとめ

✅ JCSは覚醒度を素早く伝えるツール。急変・報告に強い

✅ GCSは機能別に変化を追えるツール。経過観察・予後評価に強い

✅ 数字で伝えることで、チーム内の認識のズレをなくし、変化を見逃さなくなる

「発語が乏しい」「開眼しない」「声かけに反応しない」——あなたが普段やっている観察は、すでに意識レベル評価の核心です。それを数字に置き換えるだけで、報告の精度が変わります。

参考・根拠

  • Teasdale G, Jennett B. Assessment of coma and impaired consciousness: a practical scale. Lancet, 304(7872), 81-84.(1974年)
  • 太田富雄ほか. 急性期意識障害の新しいGrading. 脳神経外科, 2(11), 623-627.(1974年)
  • 日本救急医学会「救急診療指針」
  • 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン 2021」

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この記事を書いた人

臨床ナースラボ 管理者現役看護師

日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。