ブレーデンスケール完全ガイド|6項目の評価ポイントとケアへのつなげ方
2026-04-09
この記事でわかること
- ✓ブレーデンスケール6項目の意味と評価のポイント
- ✓カットオフ値の考え方(病院・在宅で異なる理由)
- ✓スコアをケアにつなげる考え方
- ✓厚労省危険因子評価・DESIGN-R®との使い分け
「ブレーデンスケール、入院時に評価して……それで何をすればいいんだっけ?」
点数をつけて記録して終わり、になっていませんか?ブレーデンスケールは「褥瘡になりそうな人を見つけて、先手を打つ」ためのツールです。評価すること自体が目的ではなく、スコアから具体的なケアにつなげることに意味があります。
1. ブレーデンスケールとは?基本をおさらい
褥瘡リスクを「予測する」ためのスケール
ブレーデンスケール(Braden Scale)は、1987年にBradenとBergstromによって開発された褥瘡発生リスクの予測スケールです。日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」でも使用が推奨されています(推奨度B)。
大切なのは、ブレーデンスケールは褥瘡ができる「前」に使うものだということ。褥瘡ができてからの評価にはDESIGN-R®を使います。
6項目と点数の全体像
| 項目 | 評価するもの | 点数 |
|---|---|---|
| 知覚の認知 | 圧迫による不快感を感じ、訴えられるか | 1〜4 |
| 湿潤 | 皮膚が湿気にさらされている程度 | 1〜4 |
| 活動性 | 身体活動の程度(どこまで動けるか) | 1〜4 |
| 可動性 | 体位を自分で変えられるか | 1〜4 |
| 栄養状態 | 食事摂取のパターン | 1〜4 |
| 摩擦とずれ | 皮膚に摩擦・ずれが生じているか | 1〜3 |
合計は6〜23点。DESIGN-R®とは逆で、点数が低いほどリスクが高いことに注意してください。

カットオフ値の考え方——環境で変わる
| 環境 | カットオフ値 | 意味 |
|---|---|---|
| 病院(一般病棟) | 14点以下 | 高リスク |
| 在宅・施設 | 17点以下 | 高リスク |
| ICU・高度急性期 | 12〜16点 | 患者背景により変動 |
病院では医療者が常にそばにいて介入できるのに対し、在宅では介入頻度が限られるため、カットオフ値が異なります。
2. 6項目の評価ポイントを現場目線で解説
知覚の認知——「痛みを訴えられるか」がカギ
圧迫による不快感を患者さん自身が感じて、訴えたり体を動かしたりできるかを評価します。
| 点数 | 状態 |
|---|---|
| 1 | 全く知覚なし:意識レベル低下や鎮静により、痛み刺激に反応しない |
| 2 | 重度の障害あり:痛み刺激にのみ反応。不快感を訴えられない |
| 3 | 軽度の障害あり:呼びかけには応じるが、不快感を十分に伝えられないことがある |
| 4 | 障害なし:不快感を感じたら訴えられる。体位変換の要求もできる |
湿潤——おむつ交換の頻度だけで判断しない
皮膚が汗や尿・便でどの程度湿っているかを評価します。
| 点数 | 状態 |
|---|---|
| 1 | 常に湿っている:発汗や尿失禁で皮膚が常に湿潤 |
| 2 | たいてい湿っている:1日1回以上のリネン交換が必要 |
| 3 | 時々湿っている:1日1回程度のリネン交換が必要 |
| 4 | めったに湿っていない:定期的な交換のみで対応できる |
活動性——「ベッド上」と「車椅子」の境界
日常の身体活動レベルを評価します。
| 点数 | 状態 |
|---|---|
| 1 | 臥床:ベッド上で過ごしている |
| 2 | 車椅子:歩行能力が著しく制限。車椅子には移れる |
| 3 | 時々歩行:日中に時々、短い距離を歩ける |
| 4 | 歩行可能:1日に最低2回は病室外を歩ける |
可動性——「自力で体位変換できるか」を見る
体位を自分で変える能力を評価します。活動性と似ていますが、こちらはベッド上や椅子上での体の動かし方に焦点があります。
| 点数 | 状態 |
|---|---|
| 1 | 全く動けない:介助なしでは体や四肢の位置を変えられない |
| 2 | 非常に限られる:時々わずかに動かせるが、頻繁な体位変換は自力でできない |
| 3 | やや限られる:頻繁にわずかな体位変換を自力でできる |
| 4 | 自由に動ける:介助なしで頻繁に大きな体位変換ができる |
栄養状態——食事摂取量だけでなく全身状態を見る
通常の食事摂取パターンを評価します。
| 点数 | 状態 |
|---|---|
| 1 | 不良:食事をほとんど食べない。3日以上の絶食、または点滴のみ |
| 2 | やや不良:食事摂取量が少ない。経管栄養や点滴で最低限の栄養 |
| 3 | 良好:食事の半分以上を摂取。たんぱく質もある程度摂れている |
| 4 | 非常に良好:ほぼ全量摂取。間食も摂れている |
摩擦とずれ——見落としやすい「ずれ力」の評価
皮膚に摩擦やずれが生じているかを評価します。この項目だけ1〜3点の3段階です。
| 点数 | 状態 |
|---|---|
| 1 | 問題あり:移動時にシーツ上で皮膚がずれる。しばしばベッド上でずり落ちる |
| 2 | 潜在的に問題あり:弱々しく動く。移動時にある程度のずれが起こりえる |
| 3 | 問題なし:自力で移動でき、移動中に十分な筋力で体を支えられる |
3. スコアをケアにつなげる
高リスク(14点以下)のときに確認すること
体圧分散マットレスの選定・見直し
ウレタンフォーム→エアマットレスへの変更を検討
体位変換スケジュールの設定
2時間ごとを基本に、患者の状態に応じて調整
栄養サポートチーム(NST)への相談
栄養状態が低い場合
スキンケアの強化
皮膚の湿潤管理・保湿・保護
毎日の皮膚観察
清拭やおむつ交換時に好発部位を確認する習慣を
中リスク(15〜18点)でも油断できない理由
手術後・急性疾患による臥床・食事摂取量の急な低下など、短期間でスコアが変動することがあります。中リスクの患者さんには定期的な再評価(少なくとも週1回、状態変化時は随時)を行いましょう。
項目別に見る「次の一手」
合計点だけでなく、どの項目のスコアが低いかに注目することで、具体的なケアの方向性が見えてきます。
| 低い項目 | 考えること |
|---|---|
| 知覚の認知 | 看護師主導の定期的な体位変換 |
| 湿潤 | 撥水性クリーム・おむつ選択の見直し・発汗対策 |
| 活動性 | 離床の促し・リハビリとの連携 |
| 可動性 | 体位変換の介助・ポジショニング |
| 栄養状態 | NSTへの相談・栄養補助食品の検討 |
| 摩擦とずれ | 背抜きの徹底・スライディングシートの活用 |
4. 厚生労働省「危険因子評価」との関係
入院時スクリーニング → 詳細評価の流れ
褥瘡管理の現場では、2つの評価が異なる役割で使われています。入院時に厚労省の「危険因子評価」でスクリーニングし、リスクありの場合にブレーデンスケールで詳細評価を行い、ケア計画を立案します。
厚労省 危険因子評価の項目
日常生活自立度が低い入院患者さんを対象に、以下の項目を「あり/なし(できる/できない)」で評価します(別紙3「褥瘡対策に関する診療計画書」に基づく)。
- 基本的動作能力——ベッド上での自力体位変換
- 基本的動作能力——イス上での坐位姿勢の保持・除圧
- 病的骨突出
- 関節拘縮
- 栄養状態低下
- 皮膚湿潤(多汗・尿失禁・便失禁)
- 皮膚の脆弱性——浮腫
- 皮膚の脆弱性——スキン-テアの保有・既往
※平成30年度改定でスキン-テアの項目が追加されています。様式の詳細は施設の最新版を確認してください。
1項目でも「あり」または「できない」があれば、褥瘡対策の診療計画書を作成し、予防的介入を開始します。
役割の違いを整理
| 厚労省 危険因子評価 | ブレーデンスケール | |
|---|---|---|
| 目的 | スクリーニング(ふるい分け) | 詳細なリスク評価 |
| 形式 | あり/なし の二者択一 | 各項目1〜4点のスコアリング |
| タイミング | 入院時(自立度B・C) | リスクありの患者に定期的に |
| 診療報酬 | 入院基本料の算定要件 | ガイドラインで推奨(推奨度B) |
5. ブレーデンスケールとDESIGN-R®の使い分け
褥瘡管理には予防と治療・経過評価の2つのフェーズがあります。
- 予防フェーズ:褥瘡がまだできていない段階 → ブレーデンスケールでリスク評価
- 治療・経過評価フェーズ:褥瘡が発生した後 → DESIGN-R®で創の状態を評価
褥瘡管理の全体像
入院時スクリーニング(厚労省 危険因子評価)
↓ リスクあり
ブレーデンスケールで詳細評価
↓ ケア計画立案・実施
定期的に再評価(状態変化時・週1回)
↓ 万が一、褥瘡が発生したら
DESIGN-R®で経過評価
この流れをチーム全体で共有しておくと、「なぜブレーデンを評価するのか」「その後どうするのか」が明確になります。
6. よくある疑問とQ&A
Q. 評価のタイミングはいつ?入院時だけ?
A. 入院時の評価は必須ですが、それだけでは不十分です。状態が変化したタイミング(手術後・ADL低下・食事量低下など)と、定期的な再評価(週1回程度)を組み合わせるのが理想です。
Q. スタッフによってスコアが違う——どうすればいい?
A. ブレーデンスケールは評価者間でばらつきが出やすいことが知られています。定期的なカンファレンスでスコアの付け方を擦り合わせる、評価時の根拠を記録に残す、といった方法が有効です。
Q. 在宅ではカットオフ値が違うって本当?
A. はい。在宅では医療者の介入頻度が限られるため、カットオフ値が高く設定されています(病院14点→在宅17点)。同じスコアでも在宅の方がリスクが高いと判断されます。
Q. OHスケールとの違いは?
A. OHスケール(大浦・堀田スケール)は日本で開発された4項目のスケールです。ブレーデンスケールより項目が少なく簡便ですが、栄養状態や湿潤の評価が含まれていません。施設の方針に従って選択してください。
まとめ
✅ 6項目それぞれが、どんなケアが必要かを示すシグナル
✅ 合計点だけでなく、低い項目に注目して介入を考える
✅ 厚労省評価でスクリーニング → ブレーデンで詳細評価 → DESIGN-R®で経過評価、という流れの中で使う
「評価しなさいと言われたから評価する」ではなく、「この患者さんの褥瘡を防ぐために評価する」。その視点の転換が、ブレーデンスケールを活かすカギです。
参考・根拠
- 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」(2022年)
- Braden BJ, Bergstrom N. Predictive Validity of the Braden Scale for Pressure Sore Risk in a Nursing Home Population. Research in Nursing & Health, 17(6), 459-470.(1994年)
- 厚生労働省「褥瘡対策に関する診療計画書(別紙3)」関連通知(平成30年度改定)
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この記事を書いた人
臨床ナースラボ 管理者現役看護師
日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。