血圧測定の正しい方法と注意点|マンシェットの巻き方から測定条件の統一まで
2026-04-28
「血圧測定なんて、ボタンを押すだけでしょ?」
確かに自動血圧計は便利です。でも、マンシェットの巻き方一つで値は10mmHg以上変わることがあります。測定条件が揃っていなければ、その値を信じていいのかどうかもわかりません。
この記事では、正しい測定手技と、現場で意外と意識されていないポイントをコンパクトにまとめます。
1. マンシェットの巻き方——ここで値が変わる
サイズの選び方
マンシェットのゴム嚢の幅は、上腕周囲の約40%が適正とされています(JSH2019)。成人の標準サイズは幅12〜14cmですが、腕が太い方に標準サイズを使うと血圧は高く出ます。
| 上腕周囲 | 推奨サイズ |
|---|---|
| 22〜32cm | 標準(幅13cm程度) |
| 33cm以上 | ラージサイズ(幅16cm程度) |
施設にラージサイズがない場合もありますが、サイズが合っていないことを認識しておくだけでも、値の解釈が変わります。
巻く位置と強さ
- マンシェットの下端を肘窩(肘の内側)の2〜3cm上に合わせる
- ゴム嚢の中心を上腕動脈の走行上に合わせる
- 巻きつけの強さはマンシェットと腕の間に指が1〜2本入る程度

緩い・きついとどう変わるか
| 巻き方 | 値への影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 緩すぎる | 高く出ることがある | カフ内の圧が上腕に均等に伝わりにくくなるため |
| きつすぎる | 低く出ることがある | 測定前からすでに血管を圧迫している状態になるため |
サイズの不適合や装着不良によって、5〜10mmHg以上の誤差が生じることがあります(JSH2019)。
2. 自動血圧計と聴診法——どう使い分ける?
自動血圧計(オシロメトリック法)の仕組みと限界
現場で最も多く使われる自動血圧計は、カフ内の圧力振動(オシロメトリック法)から血圧を算出しています。
便利な点:
- 操作が簡単で、測定者による差が出にくい
- 脈拍数も同時に表示される
限界:
- 不整脈がある場合は不正確になりやすい(エラーが出ることも)
- 体動・振戦があると測定できない
- ショック・低血圧では検出できないことがある
自動血圧計は万能ではありません。エラーが出るとき、値に疑問があるときは聴診法で確認するという判断ができることが大切です。
聴診法が必要な場面
- 自動血圧計でエラーが繰り返されるとき
- 不整脈がある患者さん
- ショック・低血圧が疑われるとき
- 自動血圧計の値に臨床的な違和感があるとき
聴診法では、マンシェットで加圧→徐々に減圧しながら、聴診器で上腕動脈のコロトコフ音(K音)を聴取します。K音が聞こえ始めた点が収縮期血圧、消失した点が拡張期血圧です。
加圧はどこまで?
前回の収縮期血圧がわかっていれば、その値+30mmHg程度が目安です。初回や不明な場合は、まず触診法で収縮期血圧を概算し、そこから+30mmHgまで加圧します。この目安は自動血圧計の手動加圧モードでも同じです。加圧しすぎると患者さんの痛み・不快につながるため、必要以上に上げすぎないことも大切です。
触診法はいつ使う?
触診法は、聴診法で音が聞き取れないほど血圧が低い場合に使います。マンシェットで加圧後、減圧しながら橈骨動脈の拍動が触れ始めた点を収縮期血圧とします。拡張期血圧は測定できません。
3. 現場でよくある「それ、大丈夫?」
測るたびに値が違うのはなぜ?
血圧は呼吸ごとに変動する生理的な値なので、測るたびに多少違うのは正常です。ただし、測定条件がバラバラだと、変動が「状態の変化」なのか「条件の違い」なのか区別がつきません。
測定条件による値への影響の目安:
| 条件 | 値への影響 |
|---|---|
| 会話中 | +10〜15mmHg程度 |
| 膀胱が充満 | +10〜15mmHg程度 |
| 背もたれなし | +5〜10mmHg程度 |
| 足を組んでいる | +5〜10mmHg程度 |
| 腕が心臓より低い | 高く出やすい |
これらは一つひとつは小さく見えますが、複数が重なると20mmHg以上の誤差になることもあります。
測定中に患者さんが喋ってしまうとき
会話は血圧を上昇させます。でも、話好きな患者さんに「黙っていてください」とは言いにくいですよね。
声掛けの例としては、「正確に測りたいので、測っている間だけ少し静かにしていただけますか」と測定前にお伝えしておくと、自然に協力を得やすくなります。
血圧が高い時の声掛け
測定後に「高いですね」と伝えると、患者さんが緊張してさらに上がることがあります(白衣高血圧と同じメカニズム)。
伝え方の一例として、「少し高めに出ていますが、測定条件で変わることもありますので、もう一度測り直してみますね」と、再検する前提で伝えると不安を和らげやすいです。
測定してはいけない部位
以下の腕では血圧測定を避けます。
- 麻痺側(脳梗塞後など):循環動態が異なるため、原則避ける
- シャント側(透析患者):シャントの閉塞リスクがあるため、原則避ける
- リンパ節郭清側(乳がん術後など):リンパ浮腫の悪化リスク。採血・点滴も同様に原則避ける
- 点滴側(ロック中も含む):加圧により留置針のずれ・逆血のリスク。施設の方針に従う
両腕とも使えない場合は、足首(後脛骨動脈付近)での測定を検討します。ただし、足首は心臓からの距離が長く、末梢に向かうにつれて脈波が増幅されるため、上腕より収縮期血圧が10〜20mmHg程度高く出るのが正常です。足首で測定した場合は、上腕の値と単純比較せず、その旨を記録に残してチームに共有してください。
衣服の上から測っていないか
厚手の衣服の上からマンシェットを巻くと、圧が均等に伝わらず値が不正確になります。薄手の肌着1枚程度なら影響は少ないとされていますが、原則として素肌か薄手の肌着の上から巻くようにしてください。
体位と腕の高さ
- 座位で測る場合:背もたれに寄りかかり、足を床につけ、測定する腕を心臓の高さに保つ
- 臥位で測る場合:腕を体の横に置き、心臓と同じ高さに
- 腕が心臓より低いと高く出て、高いと低く出る
4. チームで揃えたい測定条件
セクション3で見た通り、測定条件のばらつきは値に直接影響します。測定する腕・体位・安静時間・マンシェットサイズ・測定方法をチームで統一し、トレンドを正しく評価できるようにしておくことが大切です。
詳しい測定条件の考え方と、測定後の評価・対応については、下記のリンク先で解説しています。
よくある疑問 Q&A
Q: 左右どちらで測るべき?
A: 初回は左右両方で測定し、差を確認します。以降は高い方の腕で統一するのが一般的です。左右差が持続的に大きい場合(20mmHg以上など)は、血管系の問題の可能性があるため医師に相談してください。
Q: 安静は何分必要?
A: 日本高血圧学会のガイドライン(JSH2019)では、座位で少なくとも5分間の安静後に測定することが推奨されています。排泄・入浴・運動の直後はさらに時間を置くことが望ましいです。
Q: 手首式血圧計は使える?
A: 手首式は簡便ですが、手首の位置(高さ)によって値が変動しやすいという限界があります。臨床現場では上腕式が標準です。在宅で患者さんが使用する場合は、「手首を心臓の高さに保つ」ことを指導してください。
Q: 血圧測定にそんなに技術が必要?
A: 自動血圧計のボタンを押すだけなら、確かに誰でもできます。でも、正確な値を出すための条件を整えることが看護師の技術です。マンシェットの巻き方、安静の確保、測定部位の選択、値に疑問があるときの聴診法——これらを判断できることが、「測っただけ」と「正しく測れた」の違いになります。
まとめ
- ✅ マンシェットは指1〜2本入る強さで巻く。緩いと高く、きついと低く出ることがある
- ✅ サイズが合っていないと値がずれる。腕が太い方にはラージサイズを
- ✅ 自動血圧計でエラーや違和感があれば聴診法で確認する判断を持つ
- ✅ 測定中の会話・体位・腕の高さで値は変わる。条件を意識する
- ✅ 同じ患者さんには同じ条件で測定し、トレンドを正しく評価する
- ✅ 測定条件をチームで共有し、スタッフ間のばらつきを防ぐ
血圧測定は最も身近なバイタルサインだからこそ、「ボタンを押すだけ」で終わらせない意識が大切です。
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参考・根拠
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」
- 日本循環器病予防学会「血圧測定についての最新知識」(2021)
- 看護roo!「血圧測定の意義とポイントは?」
- 看護roo!「血圧測定(聴診法)」
- ナース専科「血圧測定の方法|測定部位・手順・注意点」
- レバウェル看護「看護師が行う血圧測定のポイントとは?目的から手順まで解説」
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この記事を書いた人
臨床ナースラボ 管理者現役看護師
日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。