バルーンカテーテルの留置と管理|挿入から抜去判断・トラブル対応まで
2026-04-20
バルーンカテーテル(膀胱留置カテーテル)は、挿入して終わりではありません。留置してからの管理・観察・判断こそが看護師の役割です。
この記事では、留置の手順(導尿との違い)から、日常管理のポイント、CAUTI予防、トラブル対応、そして「いつ抜くか」の判断までまとめます。
バルーンカテーテルとは——目的と適応
膀胱留置カテーテルの目的
バルーンカテーテル(膀胱留置カテーテル、フォーリーカテーテル)は、尿道を通して膀胱内にカテーテルを挿入し、先端のバルーンを膨らませて留置することで、持続的に尿を排出させるデバイスです。
- 持続的な尿のドレナージ(尿閉、神経因性膀胱など)
- 正確な尿量測定(重症患者の輸液管理、術後管理)
- 手術中・手術後の膀胱管理
- 終末期の患者の苦痛緩和
適応となる場面
- 急性尿閉で一時的導尿では対応できない場合
- 周術期(特に長時間手術、骨盤内手術)
- 重症患者で正確な尿量モニタリングが必要な場合
- 仙骨部の褥瘡があり、尿汚染を避けたい場合
- 終末期で患者の安楽を優先する場合
ただし、バルーンカテーテルは感染リスクを伴うデバイスです。「便利だから」「尿量を測りたいから」という理由だけで安易に留置すべきではなく、適応を明確にしたうえで使用することが大切です。
なお、CDCガイドラインでは失禁管理のみを目的としたカテーテル留置は推奨していません。オムツやパッドで管理できる場合は、カテーテルよりも感染リスクが低いとされています。
導尿との違い——「留置する」ということの意味
一時的導尿は、カテーテルを挿入して排尿させたらすぐに抜去する手技です。一方、バルーンカテーテルは膀胱内に留置し続けるため、以下の点が大きく異なります。
- 感染リスクが持続する(留置1日あたり細菌尿の発生率が3〜10%ずつ上昇)
- 管理・観察が継続的に必要になる
- 「いつ抜くか」の判断が求められる
つまり、バルーンカテーテルは挿入がゴールではなく、留置してからが本番です。
留置の手順——導尿からの追加ステップ
挿入の基本は導尿と同じ
カテーテルの挿入手技(無菌操作、潤滑剤の使用、男女別の挿入方法)は、基本的に導尿と同じです。詳しくはを参照してください。
ここでは、導尿からバルーン留置に切り替わる追加ステップを解説します。
尿の流出を確認してからバルーンを膨らませる
カテーテルを挿入し、尿の流出を確認してから、バルーンに滅菌蒸留水を注入します。
- 注入量はカテーテルに記載された規定量(一般的に10mL)
- 注入時に抵抗や患者の痛みがないか確認する
- 抵抗や痛みがあれば、バルーンが尿道内にある可能性があるため、注入を中止し、カテーテルをもう少し進めてから再度試みる
重要
尿の流出を確認する前にバルーンを膨らませると、尿道損傷のリスクがあります。これは最も注意すべきポイントです。

バルーンカテーテルの構造:先端のバルーン、排尿ルーメン、固定水注入ポート
固定方法——男女で異なる
バルーンを膨らませたら、カテーテルを固定テープで皮膚に固定します。固定位置は男女で異なります。
- 男性:陰茎を頭側(腹部方向)に引き上げ、下腹部に固定する。足側に固定すると、陰茎と体幹の付け根部分でカテーテルが尿道粘膜を圧迫し続け、損傷や潰瘍形成のリスクがある
- 女性:大腿内側に固定する。女性は尿道が短いため、カテーテルが固定されていないと体動で動きやすく、尿道口への摩擦や牽引の原因になる
いずれの場合も、ゆとりを持たせて固定することが大切です。ピンと張った状態で固定すると、体動時にカテーテルが引っ張られ、尿道粘膜を損傷します。
蓄尿バッグの接続と設置
カテーテルと蓄尿バッグ(閉鎖式ドレナージバッグ)を接続し、以下のポイントで設置します。
- 膀胱より低い位置に設置する(逆流防止)
- 床につけない(排尿口の汚染防止)
- ベッド柵にフックで吊るすのが一般的
留置中の管理——日常ケアのポイント
蓄尿バッグの位置管理
蓄尿バッグは常に膀胱より低い位置を保つのが原則です。バッグが膀胱より高くなると、バッグ内の尿が膀胱に逆流し、尿路感染のリスクが高まります。
ただし、車椅子への移乗やストレッチャーでの搬送時には、一時的にバッグが高くなってしまうことがあります。以下の工夫で影響を最小限にできます。
- 移乗前にバッグ内の尿を排出しておく(逆流する尿量を減らす)
- 搬送中もできるだけ膀胱より低い位置を保つよう意識する
- 高くなる時間をできるだけ短くする意識を持つ
閉鎖式ドレナージシステムの維持
膀胱留置カテーテルのドレナージ回路は、閉鎖式(カテーテルとバッグが一体で接続されている)が原則です。
- カテーテルとバッグの接続部を不必要に外さない
- 尿検体を採取する場合は、サンプリングポートよりバッグ側(下流側)のチューブを一時的にクランプして尿を貯留させ、サンプリングポートをアルコール綿で消毒してからシリンジで吸引して採取する
- バッグの排尿口から尿を排出する際は、排尿口が汚染されないよう注意する
回路を開放するたびに細菌侵入のリスクが生じます。閉鎖式の原則を崩さないことが感染予防の基本です。
陰部洗浄と清潔保持
留置中は、基本的に毎日の陰部洗浄を行います。
- 微温湯で洗浄し、陰部を清潔に保つ
- カテーテル挿入部周囲の分泌物を愛護的に除去する
- 消毒薬での洗浄は推奨されていない(CDCガイドライン2009)——通常の陰部洗浄で十分
尿量・尿の性状の観察
留置中は、尿量と尿の性状を定期的に観察します。
尿量の目安:
- 正常:0.5〜1.0mL/kg/時間
- 乏尿:0.5mL/kg/時間以下が持続する場合は報告
- 無尿:尿の流出がない場合は、まずカテーテルの閉塞を確認
尿の性状:
- 混濁・浮遊物:感染の可能性
- 血尿:粘膜損傷、感染、結石など
- 沈殿物:長期留置による結石形成のリスク
※ 尿量の判定には、当サイトのもご活用ください。
固定テープの管理と皮膚トラブル予防
- 固定テープは定期的に貼り替え、皮膚の状態を観察する
- 貼り替え時に固定位置を少しずらすと、同じ部位への負担を軽減できる
- 皮膚が脆弱な患者には、皮膚被膜剤の使用を検討する
CAUTI(カテーテル関連尿路感染症)の予防
CAUTIとは
CAUTI(Catheter-Associated Urinary Tract Infection)は、膀胱留置カテーテルに関連して発生する尿路感染症です。代表的な医療関連感染の一つとされています。
細菌は主に以下の2つの経路で膀胱に侵入します。
- 管腔内経路:ドレナージ回路の接続部や排尿口からの細菌侵入
- 管腔外経路:カテーテル外面と尿道粘膜の間を伝って上行する細菌侵入
留置期間が長くなるほどリスクは上昇し、1日あたり3〜10%の割合で細菌尿が増加するとされています(CDCガイドライン2009)。
予防の基本
CAUTIの予防は、以下の要素を組み合わせたバンドルアプローチが有効です。
1. 適切な適応のもとで挿入する(不必要な留置をしない)
2. 挿入時は無菌操作を厳守する
3. 閉鎖式ドレナージシステムを維持する
4. 不必要になったら速やかに抜去する
このうち、最も効果が大きいのは4. 早期抜去です。
「本当にまだ必要か?」——毎日の適応評価
バルーンカテーテルが留置されている患者に対して、毎日「本当にまだ必要か?」を評価することが、CAUTI予防の最も重要なアクションです。
- 術後で留置された場合、急性期を脱したら抜去を検討する
- 尿量モニタリング目的なら、間欠的導尿や他の方法で代替できないか検討する
- 「入っているから」「まだ入れておこう」という漫然留置を防ぐ
トラブルと対応
尿漏れ(カテーテル周囲からの漏れ)
カテーテルが留置されているのに、カテーテル周囲から尿が漏れる——これは現場で最もよく遭遇するトラブルの一つです。
| 原因 | 確認方法 | 対応 |
|---|---|---|
| カテーテルの閉塞 | ミルキングで流出が改善するか | チューブのミルキング、屈曲の解除 |
| 膀胱攣縮(バルーンの刺激で膀胱が不随意に収縮する) | 漏れが間欠的か、痛みを伴うか | 医師に報告し、鎮痙薬の検討 |
| カテーテル径が細すぎる | 上記を除外した場合 | 医師と相談しサイズアップを検討 |
| バルーンの固定水減少 | 固定水量を確認 | 規定量まで補充(または交換) |
ミルキングについて
カテーテルのチューブを指先でしごいて、内腔の詰まりを解除する操作です。閉塞が疑われるときに行うものであり、ルーチンで行うものではありません。不必要なミルキングはチューブ内に陰圧を発生させ、膀胱粘膜への刺激になりえます。ただし、術後で血尿が予想される場合(前立腺手術後など)は、血塊による閉塞を防ぐためにこまめに行うことがあります。ミルキングの方法や判断基準は施設によって異なるため、施設の手順に従ってください。ミルキングしても流出が改善しない場合は、カテーテルの交換が必要です。
尿漏れ=「太いカテーテルに替える」と短絡的に考えるのではなく、まず原因を確認することが大切です。
閉塞(尿が流出しない)
尿の流出が突然なくなった場合、以下を確認します。
1. チューブの屈曲・圧迫がないか(体の下敷きになっていないか)
2. 蓄尿バッグが満杯になっていないか
3. チューブ内に沈殿物・血塊がないか(ミルキングで改善するか)
これらで改善しない場合は、膀胱洗浄やカテーテル交換を医師に相談します。
血尿
カテーテル留置中の血尿は、以下の原因が考えられます。
- カテーテル挿入時・交換時の粘膜損傷
- 尿路感染症
- 膀胱結石
- バルーンによる膀胱粘膜の機械的刺激
薄いピンク色程度であれば経過観察で改善することが多いですが、鮮血尿や血塊による閉塞のリスクがある場合は、速やかに医師に報告します。
自己抜去(バルーンが膨らんだまま抜けた場合)
認知症やせん妄のある患者さんで起こりうるトラブルです。バルーンが膨らんだまま引き抜かれると、尿道粘膜の損傷・出血が起こります。
- 出血の有無と程度を確認する
- 尿道口からの出血があれば圧迫し、医師に報告する
- 再挿入の必要性を医師と判断する
- 今後の予防策を検討する(ミトンの使用、バルーンの必要性の再評価など)
自己抜去を繰り返す場合は、「そもそもバルーンが本当に必要か」を再評価することも大切です。抑制で対応するのではなく、抜去を検討する視点も持ちましょう。
抜去の判断と抜去後の観察
いつ抜くか——漫然留置を防ぐ視点
バルーンカテーテルは、留置の目的が解消されたら速やかに抜去します。
- 術後管理目的 → 急性期を脱し、自力排尿が見込まれたら
- 尿量モニタリング目的 → 全身状態が安定し、厳密な管理が不要になったら
- 尿閉 → 原因が改善されたら(または間欠的導尿への切り替え)
また、長期留置は膀胱が常に空の状態を維持するため、膀胱の蓄尿機能や排尿筋の収縮力が低下することがあります。留置期間が長くなるほど、抜去後の自然排尿の回復に時間がかかる可能性があり、これも早期抜去を検討すべき理由の一つです。
カテーテルが留置されている日数を意識し、毎日の回診やカンファレンスで適応を確認することが重要です。
抜去の手順
1. 患者に説明し、同意を得る
2. バルーン内の固定水をシリンジで全量吸引する(注入量と一致するか確認)
3. カテーテルをゆっくり引き抜く
4. 抜去後、尿道口からの出血がないか確認する
5. カテーテルの先端を観察する(汚染、結石付着の有無)
抜去後の観察項目
抜去後は、自然排尿が回復するかを注意深く観察します。
- 初回排尿の有無と時間:抜去後6〜8時間以内に排尿があるか
- 排尿量:少量頻回ではないか(膀胱に尿が溜まったまま溢れ出ている溢流性尿失禁の可能性——排尿があっても残尿が多い場合がある)
- 残尿:排尿後の残尿感、エコーでの残尿測定
- 尿失禁:一時的なものか持続するか
- 血尿:抜去に伴う粘膜損傷
抜去後に排尿がない場合は尿閉の可能性があるため、導尿やエコーでの膀胱残尿量の評価を検討します。
よくある疑問 Q&A
Q: バルーンの固定水に生理食塩水を使ってもいい?
A: 製品の添付文書と施設マニュアルに従ってください。多くの製品では滅菌蒸留水が指定されていますが、カテーテルの素材や製品によって推奨される固定水は異なります。生理食塩水を使用した場合、バルーン内で塩分が結晶化し、バルーンが完全にしぼまなくなるリスクが報告されていますが、一律に「使用不可」ではありません。必ず使用する製品の添付文書を確認してください。
Q: カテーテルの交換頻度は?
A: CDCガイドラインでは、定期的な固定間隔での交換は推奨していません。交換は、閉塞や感染、機能不全など臨床的な適応がある場合に行います。素材によって留置可能な期間の傾向は異なりますが(一般にシリコンの方がラテックスより長期留置に向く)、具体的な交換時期は製品ごとの推奨留置期間と施設基準を確認してください。
Q: シリコンとラテックスの違いは?
| ラテックス | シリコン | |
|---|---|---|
| 留置期間 | 比較的短期向き | 長期留置に向く |
| アレルギー | ラテックスアレルギーの患者には使用不可 | アレルギーリスクが低い |
| 柔軟性 | 柔らかい | やや硬め |
| コスト | 安価 | やや高価 |
| 結石付着 | 付着しやすい | 付着しにくい |
長期留置が予想される場合やラテックスアレルギーがある場合は、シリコン製を選択します。
Q: 尿の返りがないのにバルーンを膨らませていい?
A: 原則として、尿の流出を確認するまでバルーンは膨らませません。カテーテルの先端が膀胱に到達していない状態でバルーンを膨らませると、尿道内でバルーンが膨張し、尿道損傷を引き起こします。尿の流出がない場合は、カテーテルをもう少し進めるか、挿入をやり直してください。ただし、十分な深さまで挿入しているのに尿が出ない場合は、脱水による乏尿やカテーテル先端の位置が原因の可能性もあります。カテーテルを少し回転させたり、下腹部を軽く圧迫して確認してください。それでも尿の流出がなく、膀胱に到達しているか確信が持てない場合は、バルーンを膨らませず医師に相談してください。
Q: 蓄尿バッグの尿は何時間ごとに排出する?
A: 明確な基準はありませんが、バッグが満杯になる前に排出することが原則です。各勤務帯で確認し、必要時に排出するのが一般的です。排出時は、排尿口が汚染されないよう注意し、手袋を着用して行います。
Q: バルーン留置中の入浴はできる?
A: 施設の方針によりますが、一般的にはシャワー浴は可能とされることが多いです。入浴時は、蓄尿バッグの排尿口が汚染されないよう注意し、入浴後は接続部の水分を拭き取ります。浴槽への入浴については施設の感染対策マニュアルを確認してください。
まとめ
- バルーンカテーテルは「留置してからが本番」——管理・観察・判断が看護師の役割
- バルーンは尿の流出を確認してから膨らませる(尿道損傷の予防)
- 固定は男性は腹部側、女性は大腿内側に。ゆとりを持たせる
- 蓄尿バッグは膀胱より低く、床につけない
- 閉鎖式ドレナージシステムを維持し、不必要な回路の開放をしない
- CAUTI予防で最も効果的なのは早期抜去
- 尿漏れは原因を確認してから対応する(閉塞?攣縮?サイズ?)
- 毎日「まだ必要か?」を評価し、漫然留置を防ぐ
参考・根拠
- CDC:Guideline for Prevention of Catheter-Associated Urinary Tract Infections, 2009
- 日本泌尿器科学会:尿路感染症ガイドライン
- 北海道大学病院 感染対策マニュアル:尿道留置カテーテル管理
- 日本環境感染学会誌:カテーテル関連尿路感染を防ぐ多角的介入(坂本 2019)
- ナース専科:膀胱留置カテーテルの挿入手順
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この記事を書いた人
臨床ナースラボ 管理者現役看護師
日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。