十二誘導心電図の取り方|電極の位置・貼り方のコツ・きれいな波形を取るポイント
2026-04-21
十二誘導心電図は、入院時のルーチン検査や胸痛時の緊急対応など、看護師が取る機会の多い検査です。しかし、「この位置で本当に合っている?」と不安に感じたことはないでしょうか。
この記事では、波形の読み方ではなく、「正確にきれいな心電図を取る」ための手技に特化して解説します。電極の正しい位置、貼り方のコツ、よくある間違いとその影響までまとめます。
十二誘導心電図とは——何を見るための検査か
12個の「視点」から心臓を見る
十二誘導心電図は、体に装着した10個の電極から、電極の組み合わせによって心臓の電気的な活動を12の方向(誘導)から記録する検査です。
- 四肢誘導(6誘導):I、II、III、aVR、aVL、aVF → 心臓を前額面(正面)から見る
- 胸部誘導(6誘導):V1〜V6 → 心臓を水平面(横断面)から見る
12の方向から見ることで、心臓のどの部位に異常があるかを推定できます。看護師が波形を読む必要はありませんが、正確な位置に電極を貼らなければ、正確な情報は得られない——だからこそ手技が大切です。
看護師が心電図を取る場面
- 入院時のルーチン検査
- 胸痛・動悸・失神などの症状出現時
- 術前検査
- 不整脈の評価
- 薬剤投与中のモニタリング(QT延長のチェックなど)
特に胸痛発作時は、迅速かつ正確に取ることが求められます。日頃から手技に慣れておくことが重要です。
準備——検査前に確認すること
必要物品
- 心電計(十二誘導心電計)
- 電極(胸部用ディスポーザブル電極6枚、四肢用クリップ電極4個)
- 導電ゼリー(四肢用クリップ電極に使用。薄く均一に塗布する)
- アルコール綿(皮膚の前処理用)
- タオルまたはバスタオル(保温・プライバシー保護用)
- 記録用紙(心電計に内蔵の場合は不要)
患者への説明と環境整備
- 検査の目的を簡潔に説明する(「心臓の動きを調べる検査です」「痛みはありません」)
- 上半身の衣服を脱いでもらう(電極は直接皮膚に貼る必要がある)。厚着の患者さんでは、胸部と四肢の電極部位が露出していれば十分です
- プライバシーに配慮する(カーテンを閉める、バスタオルで必要箇所以外を覆う)
- 室温を確認する(寒いと筋緊張が高まり、アーチファクトの原因になる)
- ベッドは仰臥位にし、患者さんにリラックスしてもらう
- 心電計は患者さんの右側または左側に設置する(リード線が届く位置)
皮膚の前処理
電極を貼る部位の汗や皮脂はアーチファクトの原因になります。
- アルコール綿で電極貼付部位を軽く清拭する
- 胸毛が多い場合は、電極の密着を妨げるため、必要に応じて剃毛する(患者の同意を得たうえで)
- 痩せている患者さんでは肋骨が浮き出ていて電極が密着しにくいことがある。電極を貼った後、指で軽く押さえて密着させる
四肢誘導の電極装着
4つの電極の位置と色の覚え方
四肢誘導は、両手首と両足首の内側(骨の出っ張りを避けた位置)に装着します。
| 位置 | 色 |
|---|---|
| 右手 | 赤 |
| 左手 | 黄 |
| 左足 | 緑 |
| 右足 | 黒(アース:電気的な基準点。ノイズを逃がす役割) |
覚え方:患者さんに向かい合った状態で、右手から時計回りに「あきみちゃん」(あか→きいろ→みどり→黒)と覚えると迷いにくいです。

四肢誘導の電極位置:赤(右手)・黄(左手)・緑(左足)・黒(右足)
よくある間違い(左右の付け間違い)
四肢電極の左右を間違えると、波形が大きく変わります。特に右手と左手を逆にすると、I誘導の波形が上下逆転します。これは心電図の自動解析でも「電極の接続ミスの可能性」とコメントされることがあります。
装着後、赤が右、黄が左であることを必ず確認しましょう。
胸部誘導の電極装着——V1〜V6の位置
胸部誘導は、正しい位置に貼ることが最も重要です。位置がずれると波形が変わり、正確な診断ができなくなります。
胸部電極の色
| 電極 | 色 |
|---|---|
| V1 | 赤 |
| V2 | 黄 |
| V3 | 緑 |
| V4 | 茶 |
| V5 | 黒 |
| V6 | 紫 |
覚え方:四肢誘導と同じく「あきみちゃんブラ紫」(赤→黄→緑→茶→黒→紫、あ→き→み→ちゃ→んブラ→紫)で覚えられます。
まず第4肋間を見つける(胸骨角がカギ)
胸部誘導の基準となるのは第4肋間です。見つけ方は以下の通り。
1. 胸骨角を見つける:鎖骨の下、胸骨を指でなぞると、わずかに出っ張った部分(段差)がある。これが胸骨角
2. 胸骨角に接する肋骨が第2肋骨:胸骨角のすぐ横に触れる肋骨が第2肋骨
3. そこから下に数えていく:第2肋骨 → 第2肋間 → 第3肋骨 → 第3肋間 → 第4肋骨 → 第4肋間
コツ:肋間は「骨と骨の間の凹み」を指で感じ取りながら数えます。焦らず、一本ずつ確認しましょう。

胸骨角(緑の点)を起点に、下方へ肋間を数えて第4肋間(ゴール)を見つける
V1・V2:第4肋間の胸骨右縁・左縁
- V1:第4肋間、胸骨の右縁
- V2:第4肋間、胸骨の左縁
V1とV2は胸骨を挟んで左右対称の位置です。
V4:第5肋間と鎖骨中線の交点(V3より先にV4を決める)
V3より先にV4の位置を決めます。
- V4:第5肋間と左鎖骨中線(左鎖骨の中点から下ろした垂線)の交点
なぜV3より先にV4を決めるのか? V3はV2とV4の中間点として決めるため、V4の位置が先に確定していないとV3を決められません。
V3:V2とV4の中間点
V3:V2とV4を結んだ線の中間点
V5・V6:V4と同じ高さで前腋窩線・中腋窩線上
- V5:V4と同じ高さ(水平線上)で、左前腋窩線上
- V6:V4と同じ高さ(水平線上)で、左中腋窩線上
注意
V5・V6はV4と同じ高さ(水平ライン)を維持することが大切です。肋間を下に数え続けてしまうと、V5・V6が下がりすぎてしまいます。

V1〜V6の電極位置:点線はV4・V5・V6が同じ高さであることを示す
女性患者の場合——乳房と電極位置の関係
女性患者では、乳房と電極位置が重なることがあります。特にV4〜V6は乳房の下に位置することがあります。
- 電極は乳房の上ではなく、乳房を持ち上げて乳房の下の正しい位置に貼ります
- 乳房の上から貼ると、乳房の組織が間に入ることで波形の振幅が低下する可能性があります
- 羞恥心への配慮を十分に行い、必要に応じて同性の看護師が対応する
きれいな波形を取るためのコツ
アーチファクトの主な原因
| 種類 | 原因 | 波形の特徴 |
|---|---|---|
| 筋電図(体動) | 筋肉の緊張、震え、体動 | 不規則で細かいギザギザ |
| 交流障害(ハム) | 電源からの電磁干渉 | 規則的な細かい波(地域によって50Hzまたは60Hz) |
| 基線の動揺 | 呼吸、電極の接触不良 | 基線がゆっくり上下に揺れる |
実践的な対策
- 患者にリラックスしてもらう:「力を抜いて楽にしてくださいね。少しの間、動かずにじっとしていてください」と声をかける。記録中に患者さんが話し始めた場合は、「もう少しだけじっとしていてくださいね」と優しく伝える
- 室温を適切に保つ:寒いと筋緊張が高まり、筋電図が入りやすくなる。バスタオルで覆うなどの配慮を
- 電極の密着を確認:電極が浮いていると接触不良になる。皮膚の前処理(汗・皮脂の除去)も重要
- リード線を整理する:リード線がバラバラに垂れていると、体動時に揺れてノイズの原因になる。余ったリード線はまとめておく
- 周辺機器の電源を確認:電気毛布やベッドの電源など、不要な電源はコンセントから抜く(交流障害の原因になる)
よくある間違いと波形への影響
四肢電極の左右逆
右手と左手の電極を逆につけると、I誘導が上下逆転します。心電計の自動解析で「右左接続ミスの疑い」と表示されることもあります。装着後に色の確認を習慣づけましょう。
V1・V2の位置が高すぎる
最も多い間違いの一つが、V1・V2を第2肋間に貼ってしまうことです。胸骨角の位置を正しく把握できていないと起こりやすい。
V1・V2が高すぎると、正常でもrSr'パターン(右脚ブロック様の波形)が出現したり、ST変化を見逃す可能性があります。
V4〜V6が下がりすぎる
V5・V6を貼るとき、肋間を数え続けてV4より低い位置に貼ってしまうことがあります。V5・V6はV4と同じ水平ライン上に貼ることを意識しましょう。
位置のずれ——どこまで許容されるか
新人が不安に感じやすい「数ミリずれたらダメなのか」という疑問。実際には、電極の位置が1肋間ずれると波形に明確な影響が出ますが、数ミリ程度のずれであれば臨床的に大きな問題にはなりにくいとされています。
大切なのは毎回同じ位置に貼る再現性です。特に経過を追って比較する場合、貼る位置がずれていると「波形の変化が病態によるものか、位置のずれによるものか」の判断が困難になります。
よくある疑問 Q&A
Q: 四肢切断がある場合はどこに貼る?
A: 切断された四肢の電極は、残存する四肢のできるだけ末梢側に装着します。それも困難な場合は、体幹の該当する側(右上肢切断なら右肩付近)に装着します。体幹に近い位置に変更した場合は通常の記録と単純比較しにくくなるため、記録用紙に電極位置の変更を記載しておくことが大切です。
Q: ペースメーカーが入っている患者で注意することは?
A: 基本的な電極の位置は同じです。ただし、ペースメーカーの本体(ジェネレーター)が埋め込まれている部位(通常は左前胸部)の直上には電極を貼らないようにします。波形にはペースメーカーのスパイク(ペーシング信号)が記録されますが、これは正常な所見です。
Q: 心電図の記録速度や感度を変えるのはどんなとき?
A: 通常は記録速度25mm/秒、感度10mm/mVで記録します。波形の振幅が大きすぎて記録用紙からはみ出す場合は感度を半分(5mm/mV)に、波形が小さすぎて読みにくい場合は感度を2倍(20mm/mV)に変更します。変更した場合は記録用紙に記載します。
Q: 電極は使い回せる?
A: ディスポーザブル電極は単回使用が基本です。再利用すると粘着力が低下して電極が剥がれやすくなり、接触不良によるアーチファクトの原因になります。
Q: 異常な結果が出たとき、患者さんにどう伝える?
A: 心電図の結果の説明は医師の役割です。患者さんに「何か異常がありましたか?」と聞かれた場合は、「結果は医師から説明があります」と伝えましょう。看護師の判断で「異常があります」「大丈夫です」と伝えることは避けます。
まとめ
- 十二誘導心電図は10個の電極で12の方向から心臓を見る検査
- 四肢誘導は「あきみ」ちゃん(あか→きいろ→みどり→黒)で覚える
- 胸部誘導は胸骨角から第4肋間を見つけるのがスタート
- V3より先にV4を決める(V3はV2とV4の中間点)
- V5・V6はV4と同じ水平ラインを維持する
- 女性患者は乳房を持ち上げて正しい位置に貼る
- きれいな波形のためにリラックス・皮膚処理・リード線の整理を心がける
- 位置のずれは数ミリなら大きな問題にはならないが、再現性を意識することが大切
波形を読む力は経験とともについてきますが、正確に取る力は手技の理解で身につきます。まずは「きれいな心電図を自信を持って取れる」ことを目指しましょう。
参考・根拠
- 日本循環器学会・日本心電学会:心電図標準12誘導の記録法に関するガイドライン
- AHA/ACC/HRS:Recommendations for the Standardization and Interpretation of the Electrocardiogram(2007)
- ナース専科:「12誘導心電図の正しい手順、電極の貼り方、貼付部位の探し方」
- 日本光電:「記録前に雑音をチェック:きれいな心電図を」
- ハート先生の心電図教室:「アーチファクト」
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この記事を書いた人
臨床ナースラボ 管理者現役看護師
日々の臨床で感じた「これ、もっと早く知りたかった」をもとに、チームで判断を揃えるための知識とツールを作っています。